箱庭の海3 ページ3
なんだこいつ、助けてやったのにこの態度かよ。
イラッときたが、ここは落ち着いて対応する。
「わりぃわりぃ。困ってたみたいだったからよ」
紳士ぶってそう言えば、女はさらに表情を固める。
「頼んでないでしょ。勝手に助けてヒーロー気取り?」
はぁ?
…なんだ、この女。
呆気にとられていると、女は自分のスカートを叩き、髪を整え俺を睨んだ。
「もう、関わらないでください」
_____ドクン
俺の心臓が音を立てる。
鋭い目付きに、威圧感のある雰囲気。
膜を張り、近づけまいと隙を見せない立ち振る舞い。
威嚇されたのか、今。
唖然とする俺を置いて、女は行ってしまった。
何だったんだ、一体…。
☕
次の日。
昨日出会った女のことを考えながら登校していた。
バッサリ切られた前下がりボブの黒髪。
目は大きく、まつ毛は長い。
キリッとした顔立ちに、気品のある姿勢。
身長は、小さかった。
俺が出会ってきた中で、見た目は一番いい女だ。
けど
俺に噛み付いてきた女は、あいつが初めてだった。
ああやって助ければ、大抵の女は俺になびく。
けどあいつは…。
「あ!!見つけた!!坂田くん!!!」
校門に差し掛かった時、後ろから声をかけられた。
怒鳴り声に近い。
振り向けば、昨日遊びに誘われた女がいて。
名前、なんだっけ。
「ねぇ!なんで駅前にいなかったの!?約束したよね!!」
「あ、あぁ〜わりぃ。急に用事入っちまってよ。今度絶対埋め合わせするから、許して」
両手を合わせ眉をわざと八の字にすれば、女は満足気に笑顔になった。
「埋め合わせかぁ〜、じゃあ許したげる」
許したげるってなんだよ。
許してあげる、だろ。
てかお前にそんな許してもらっても…
そこで、俺は見つける。
あ、あいつ。
俺の横を無表情に通り過ぎた、昨日の女。
「お、おい、おま」
声をかけようとすると、あいつは走った。
目で追いかけると、男の教員の元へ行ったようで。
昨日のあいつからは想像できないような、満面の笑みで話しかけていた。
…んだあれ。
「坂田くん?どうした…って、あぁ。あの子のこと気になるの?」
肩を叩かれそう聞かれる。
「知ってんの?」
「知ってるも何も、有名じゃん。桜田 A。数学教師にベッタリな女子生徒ってみんな言ってるよー」
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作者名:お茶 | 作成日時:2019年4月10日 1時