箱庭の海10 ページ10
次の日。
俺は傷だらけの体で学校に行くと、クラスの女子からめちゃくちゃ心配された。
顔にまで傷ができていたので、そのせいだろ。
「坂田くん大丈夫!?」「私絆創膏持ってる!!」「どうしたのそれ!!」
女子たちは騒ぎに騒ぎ、手当させて欲しいと俺に近寄る。
「あんがと。でも、へーきだから」
笑顔を作り断わると、残念そうに声を出した彼女たち。
席に座り、土方を見る。
奴は本を片手にうつらうつらと居眠りをしていた。
「はよ」
軽く声をかければパチッと目が覚めたのか、目付きを鋭くさせ俺を睨んだ。
「いつもより早ぇじゃねぇか」
「まぁな」
俺はいつもギリギリに登校してくる。
今日早めに来たことが珍しいんだろう。
席に座り顔の傷をぺたぺたと触ってみる。
同時に思い出されるのは、昨日の出来事。
_________やっぱりヒーローになりたいの?マントついてないから、空は飛べないよ?
ヒーロー気取り。
最初アイツを助けた時に、そう罵倒された。
そこから謎にヒーローが定着してしまったのだろう。
てか、心配してくれてもいいじゃん、この怪我。
落ちたのは自業自得だけどよ。
ポカーンと考え込んでいると、チャイムが鳴った。
ガラガラっと担任が扉を開ける。
と何故か女子の「きゃー!」と黄色い歓声が上がり、不思議に思い顔を上げると
そこには俺の嫌いな教員が立っていた。
「桂先生がお休みなので、今日のHRは僕が担当します」
田村 光輝。
爽やかな笑顔で朝の挨拶をすると、出席を取り始めた。
そして
俺の名前が呼ばれる瞬間。
「坂田くん」
…!!!
ワントーン低く呼ばれた名前。
そして、刺されたような衝撃を覚える目付き。
直ぐに次の名前を呼んだので、誰も気づいてない。
けど、向けられた敵意は俺だけ分かってしまった。
…いや、当たり前か。
あの敵意は、俺に向けられたものだもんな。
何なんだよ、一体。
「さて…僕も頑張るので、皆さんも今日一日頑張りましょうね」
僕と一緒に、という文面で問いかける田村。
女子達は過剰に反応し、朝からお祭り騒ぎだ。
昨日のこと、知ってるのか。
可愛い桜田から聞いたのか。
だから俺を睨んだのか。
お前は、桜田の何なんだよ。
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作者名:お茶 | 作成日時:2019年4月10日 1時