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箱庭の海28 ページ28

「総悟?」


その時。

教室のドアから声が響いた。

二人して声のした方を見れば、目を丸くしたAが呆然と立っていて。


「泣いてるの…?」


歩いてきたAは、真っ先に沖田の手を握る。


「泣いてねぇ」


顔を逸らし手を振りほどこうとする沖田。

Aは優しく両手で包み込むように握り直すと、素直に沖田は大人しくなった。


二人だけの世界のような。

俺が初めから、いなかったかのような。

そんな空気感が漂っていて。

見えない境界線を越えられず、ただ二人を見ることしかできない。


「喧嘩、してねぇよ」


居心地が悪くなった俺は、カバンを持ちそう言った。

出ていこうと立ち上がる。


「待って」


そうAが俺を呼び止めた。


「何があったの」


「お前らが付き合ってたっての、聞いただけだよ」


虫の居所が悪い。

口にしただけでも机を蹴り上げたい衝動に駆られた。

グッと耐え、Aの顔を見ずに教室を後にした。

あいつにとって、今の沖田は何なんだ。

別れたはずの二人が、今もこうして分かり合ってるのはなんでだ。

んでAは、苦しい状況下に置かれながら、沖田と付き合ったんだ。

俺は、Aの全てを知りてぇ。

今ならあいつを助けたいと心から思う。

なのになんであいつの方が、先に出会ったってだけで距離が近い。

Aから人を遠ざけようと牽制していた沖田が纏っているのは、独占欲だ。ただの願望に過ぎない。

なのにAもまた、沖田には手を差し伸べ自分から触れる。

なんで、あいつなんだよ。


…Aを独占したいと思っているのは、俺の方じゃねぇのか。


下駄箱で足を止め、気づいた事実に驚愕する。

自己中で傲慢な俺らしい、答え。


俺から近づいても、あいつは笑ってごまかす。

Aから歩み寄ることがない限り、Aの全てを知ることは出来ない。


全てを知りたい、つまり独占したい。


そこまで俺は、Aに侵食されているのか。


〜Aside〜


「もう他の男にホイホイついていかねぇんですかィ」


ケロッとした顔で、総悟がそう私に問う。


「信じることにしたの」


父の分まで生きてみようと、新しい答えをくれた彼を。

私を受け入れてくれた彼のことを、信じてみたい。


「好きなんですかィ、あの男のこと…」


唐突に放たれた言葉。

上手く飲み込めず、ぎこちない返事をしてしまう。


「わ、かんない…」


好き、なのだろうか。

胸に宿るこの思いは、いったい何。

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作者名:お茶 | 作成日時:2019年4月10日 1時

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