日日是五色【ARS】 (ページ23)

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「……やめときます」

「そう」
「いや、やりたくない訳じゃないんすけど」

男だし。

思春期だし。

「でもなんか違う気する」

ふうん、ってちょっとつまらなさそうに呟いて、先輩は背を向けた。

「あの」

「まだ何かあるの？」
「名前、教えてください」
「名前？」
「また会いたくなっても。名前知らんかったら探せない」

「……AA」

・

「おっはよー！大野、今日は部活出るよね？」

朝から元気な中島。

「んー……どうすっかな」

もともと入部動機も、先輩に会いたかったからだし。

「あ、そうだ！
ちょっと小耳に挟んだんだけど。
大野が探してた先輩って、A先輩って人かも」

「……なんで？」
「柏原先輩の彼氏、盗っちゃったんだって。
で、ドロドロの修羅場を繰り広げて結局A先輩は辞めたって噂」
「それっていつの話？」
「さあ、結構前みたいな口調だったけど。
すっごくスリーポイントシュートがうまい先輩だったらしいんだけどね」
「知ってる」
「え？ちょっと大野？どこ行くの？」

よくわかんない。

自分でも。

なんでおれ先輩のことになるとこんな衝動で動いちゃうのか。

A先輩は三年の教室で頬杖をつきながらヘッドフォンで音楽を聴いてた。

誰？一年？とかひそひそ聞こえたけど、おれは気にしなかった。

「A先輩、ちょっと来て」

「は？ちょっ……何？」

朝練も終わって授業が始まる前。
静かな体育館に連れて行く。

「スリーポイントシュートの勝負しよ」
「勝負？」

「おれが勝ったら。A先輩、おれと付き合って」

「何言ってんの？こないだやりたくないって言ったくせに」

やりたくないとは言ってねえ。

だけど、その前に。

「付き合って、おれのこと好きになって」

あきれた顔してる。