日日是五色【ARS】 (ページ12)

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朝起きると、コーヒーメーカーのスイッチを入れることが日課。

夜ご飯を一緒に食べられないことが多いから、せめて朝コーヒーを一緒に飲みたい、と提案したのも私だった。

仕事柄、ちょっとだけコーヒーには詳しくなったから、美味しい豆を買っておいてる。

「おはよ」
「…はよー……」

寝起きの翔は可愛い。
いつもすごい速さで回転している頭が、ゆっくりしか動かないからか、口調もゆっくりだし、目もとろん、としてる。

「はい、コーヒー」
「ん」

寝ぐせがついたまま、新聞を読みながらコーヒーを飲む翔を眺めながら、トーストを食べるのも日課。

私は本来のんびりやだから。

朝じゃなくても、翔とこんな風にゆっくり時間を過ごしたいんだけど、な。

・

とか言う話を同じカフェで働くりりちゃんにバックルームでしてみた。

「えー？！Aさん、よく我慢してますね？」

「我慢…は別にしてないんだけど」
「だって仕事仕事でロクに会話もなくて？」
「話を聞いてくれないわけじゃないし」
「当然のように家事はAさんで？」
「家事苦手な人だから」

「甘ーーい！」

りりちゃんの声が某芸人さんみたいにヒートアップしたから、思わず辺りを見回す。

「Aさん、それ都合のいい女だと思われてますよ！」

都合のいい女。
それは確かにそうかもしれない。

「ちょっと焦らせたりした方がいいんじゃないですか？」
「焦らせる？そんな駆け引きみたいなことできないしな」
「ハロウィンの変装ですよ！」
「変装？」
「えろかわいいの着てお客さんからアプローチされるっていうのはどうですか？」
「されないでしょ」
「されますよ！Aさんお客さんの中に隠れファン多いんですから！」

そんなうまくいくんだろうか。

「それにえろかわいい衣装って何？」
「まかせてください！私ドンキで探してきます！」

不安しかない。

「りりちゃん、オープンの時間だよ。
えろかわいい衣装より仕事仕事！」

・

「え？13日も仕事になったの？」
「明後日から福岡に1週間出張。ごめんな」
「また社長？」
「また社長」

断れないのはわかる。

でも私だって土日祝日は休みが取りにくいのだけど。

その日は付き合って2周年の記念日だし、翔が好きなバンドのライブのチケットも取れたからみんなに頼み込んで休みとったのに。

さすがに腹が立った。

着てやろう、バニーガールでもなんでも。

えろかわいい衣装ってやつ。