あの子 ページ5
『・・・あの子の云ってたこと、あってたんだなぁ』
そんなことを呟いたと同時に思い出される過去の映像。あの時、彼女は空のバケツを手に持ち、私は水に濡れていた。
“Aは変なの、あんたは普通とは外れてる”
と叫んで彼女は駆け出した。その時、私は笑っていたそうだ。・・・私は憶えていないけど。
・・・なら、“普通”ってなんなの・・・?
・・・ああ云われた時からずっと気になっていたんだ。なら、普通ってなんなのかって。何を持って私は普通じゃないのかって。
「あの子って、誰だ?」
そう訊ねてきた彼の声で私は現実に戻る。
『あ、えっと、同級生です』
「・・・そうか。・・・そいつも、Aのこと優しいって思ってるんだな」
何を勘違いしたのか、そう云って微笑みかけられた。
『うーん、そうなんですかね・・・・・・?』
如何だろう。変だと云ってきたあの子は、私のことを優しいと思っているのか。答えはきっと否だ。思っていない。
『・・・織田作さんは優しいんですね』
そう呟けば彼は心底困惑したように、驚いたようにキョトンとした表情をした。
『あ、いえ。私が思っただけです。気にしないでください』
そう云い、曖昧に微笑んだが、彼はどこか引っかかるのか、ずっと首を捻っていた。
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作者名:響音 | 作者ホームページ:http://yuuha0421
作成日時:2023年11月25日 17時