占ツク作者、冬眠します【オリジナル】

俺がアンチになる理由 ページ5

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「俺、篠崎浩樹って言うんだけど、よろしく。よかったら昼飯、一緒に食べねえ？」


4月に入学してからこのセリフ、もう10回目だ。その日はなんとか会話を続けても、声をかけたやつは次の日に姿を消している。ホラーでもなんでもなく、ただ俺に声をかけられないように、他の誰かを捕まえているらしい、というのは後から聞いた話。

他人の交友関係が俺をきっかけに作られていて嬉しい、なんてことにはなりっこない。

顔はそこまで悪くない(友人談)。なのに友達ができない。理由は一応わかるが、目を背けている。その時はとにかく、友達がほしかった。多少勉強ができたもんで、地元のバカ共を見返すためにトップレベルの進学校に進んだら、このザマだ。学校の雰囲気は悪くないと思ったが、とにかく同級生と話が合わない。

そりゃそうだ。自己紹介でいきなり趣味丸出しの話を語り出したやつ、俺だって友達になりたくねえ。

呪うべきはクラスメイトじゃない。とてつもなくイキった自己紹介をかました、4月当初の俺だ。

「篠崎浩樹です、えと、アニメとかよく見ます。趣味で小説とか書いてて、割とその界隈では有名でした。まぁー、といってもプロの人とかには負けちゃうんですけどね、はは」

オタク感！ 丸出しじゃねえか！！ 実話としてTwitterに上げたら「たかだか夢小説サイトで人気あったからって現実世界でもイキっちゃうキモオタガキ草」ってクソリプが送られてくるレベルの！

そう、夢小説。イケメンの男と小説の中だけでもキャッキャウフフしたいという夢女子と呼ばれる女たちの欲望を満たす小説。初心者でもおすすめ、と銘打たれた占いツクールでこわごわ小説を書き始めた一昨年の春は、オールキャラの、ごくごく普通の二次創作(といっても二次創作自体が普通じゃないか)を投稿していた。

それが何のきっかけか、多分読者のリクエストか、サイト本来の目的である夢小説を描き始めたら、瞬く間に人気が出てしまい。人気至上主義だった俺は即効そちらにシフトチェンジ。受験生として昨年冬に更新を停止するまでは、ずっと夢女子の餌を書いていた。んで、そのままずっとサボっている。

もうやけクソだ。開き直って小説投稿してやる。キモいだのなんだのドン引きするような友達が、そもそもいないんだから。


家に帰ったらIDとパスワードを探さなくては、と心に決めた。その日の弁当は、いつもより少しだけ、しょっぱくなかった。






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衝撃の出会い→←古城常さんはTwitterを使っています……

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