占ツク作者、冬眠します【オリジナル】

Good Night!! ページ14

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『桃賀』

勉強中かもしれない。それでも耐えられず、メッセージを送ってしまった。こいつの前だけは、ひたすら自分勝手で、我儘になりたかった。

『きつねちゃん、占ツクにもコメントありがとね、桃賀ときつねちゃんの間の愛情を知らない人は、くだらない返信とかしてきそうだけど、無視していいからね』

『別に愛情じゃねーから！ 自分のアンチに愛情とか使うやつ、占ツク史上お前が初めてだと思うわ』

『あれあれ？ アンチだったらどうしてそんなに桃賀を気遣ってくれるのかな？ 実は桃賀のこと、大好きなんでしょ？笑笑 桃賀はきつねちゃんのこと、大好きだけどね』

「気安く男に“大好き”とか言うんじゃねえよ……」

貞操観念ガバガバのヒドイン夢主かよ。って、桃賀は俺のこと男って認識してないんだった。

『アンチは総じてかまちょなんだよ、構ってやったら喜ぶぜ。あと前々から言ってるだろ、俺は桃賀本体は別に好きじゃないけど桃賀の作品は嫌いじゃない』

『き、きつねちゃんがデレたああ!! スクショスクショ！』

『うるっせえお前はさっさと勉強しろ！ 落ちんぞ!!』

『嫌だね！ せっかくの息抜きなんだから息抜きまくりたいんだよ！』

俺のデレなんて何の需要もないだろうに、息抜きにもならないだろうに。ストレートなお世辞が照れくさい。

『桃賀、そのままバックレんなよ』

『あったりまえだよ、どっかのきつねちゃんと違ってそのまま戻ってこないなんてことしないもん』

『おま、なんでそのこと知ってるんだよ』

こいつがデビューしたのは、俺が引退したのと入れ替わりくらいだったのに。

『きつねちゃんは自分が意外と人気作者だったことを自覚した方がいいね、面白かったんだからまた作品書いてよ』

長らく目にしていなかった、自分の読者という存在。よりによってこいつかよ、と笑みが溢れてしまう。

『ああ、お前がニガテなこと全部クリアした、めちゃめちゃかっこいい作品書いてやる、お前が戻って来る頃には、読者全員奪っといてやるから』

だから。その先のセリフは、あからさますぎて打つのを躊躇った。俺と桃賀の、奇妙な関係を壊す一言。でもあいつはきっと、いつものように軽く受け止め、さっと流してしまうだろう、俺だけが意識する必要もないはずだ。

『桃賀、いつまでも待ってるから、頑張れ』

『花が咲く頃には、絶対会えるんだから、待ってて。それじゃあ、おやすみなさい。』

『ああ、おやすみ』


こうして、1人の占ツク作者は、長い冬を越すために眠りについた。
アンチを名乗る、彼女のファンを残して。





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