地の果てまでも(終) ページ3
…翌朝。
その場所は、以前大きな屋敷が建っていたとは思えない程、何も残っていなかった。
…全て、面白いほど上手くいったのだ。
結局、生き残ったのはお嬢様1人。
お嬢様は私に尋ねた。
これから先、自分はどう生きたら良いのか、と。
私はこの時を待っていた。
「お嬢様…私は旦那様に命じられたあの日から、貴方様に全てを捧げると、何があっても貴方様に仕えると誓いました。どうぞ、ご安心ください。私は、私だけは今後も貴方様のお傍におります」
旦那様を、家を失くしたお嬢様に差し伸べられる手はない。
お嬢様もそれを十分理解しているはず。
「今後の事…不安でしょう。ですがご安心ください。私がおります。私は何があろうと、貴方様の味方ですよ」
今のお嬢様がこの言葉を何より欲しがっていたのは、その頬に伝う雫を見ればわかる。
嗚呼、本当にお嬢様は何て愛らしいのでしょう。
家族を失くして、家も失くして…富も名誉も誇りも失くして…全てを失ったお嬢様は何の力も持たない。
無力な、ただの普通の少女だ。
そんなお嬢様が、愛らしくて堪らない…。
私だけに縋り、私だけを求める、私だけのお嬢様を、私はずっと欲していた。
それが今、ようやく手に入る…。
全てを失くしたお嬢様に残っているのは、この私だけなのですから。
「もし今後もこの私と歩んでくださるのであれば、この手をお取りください」
疑う、という事を知らないお嬢様は、求婚紛いのそれに頷き、従順にその手を重ねる。
これでお嬢様は私の物…。
万が一、私がこの火事の火の元だとばれても、お嬢様が頼れるのはこの私しかいない…。
旦那様は見ているのだろうか。
ご安心を…貴方のご命令は必ず守りますよ。
何があろうと、何処であろうと、お嬢様のお傍に。
例えそれが、この世の終わりであろうも、地の果てであろうとも…ね。
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作者名：妃闇 | 作成日時：2016年1月23日 19時
