源家長女 其の三十五 ページ9
お兄ちゃんが消毒を浸けたガーゼを傷口に当てる。
「いっ…!」
結構深い傷だから、すっごくしみる。
輝「ごめんね、A」
泣きそうな顔してお兄ちゃんが謝ってきた。
…憎めないんだよね、お兄ちゃんは。
なんだかんだ優しいしさ。
そう思い、大丈夫、と軽く返事をした。
その後は無言で空気が重たく感じた。
何か大事な話を切り出しそう、と勘だけど思った。
輝「あのさ、A。話があるんだけど…」
予想的中。
言いにくそうに下を向くお兄ちゃん。
その後に続く言葉は聞き間違いかというほど突然のことだった。
輝「引っ越そうと思ってるんだ」
どこに?と聞く前にお兄ちゃんが説明しだす。
どうやら、此処より七不思議やら怪異やらが荒れてる高校があるらしく、親にそっちの方へ行ってくれと頼まれたらしい。
「いつ…?」
どこに、とか理由とかはどうでも良かった。
ただ、みんなと一緒に過ごせる時間が知りたかった。
お兄ちゃんは困った様に笑った。その笑顔で、あぁ、と悟る。
輝「明後日」
最後の最後まで悩んで結局行くことになったのか。
そんなことが分かるくらい、残りの時間は短かった。
しかも荷づくりがあるから明日は学校を休むらしい。そしてその次の日の早朝に此処を出るという。
お別れを言う時間が一切なかった。
それがいいのか悪いのかなんて分かんないけど、やっぱり最後は。と思ってしまう自分がいる。
お兄ちゃんが保健室から出ていった。
気遣ってくれたのかな。
そう思って、ふぅ、と息をついた瞬間、何故か頬が濡れていた。
「も…今日何回泣くの、私…」
声を必死に押し殺して、顔を手で覆い、静かに泣く。
誰にも気付かれないように。
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透空(プロフ) - 若葉さん» ありがとうございます。笑 (2020年3月27日 11時) (レス) id: eb1312b7ac (このIDを非表示/違反報告)
若葉 - ka☆wa☆I☆i☆ (2020年3月8日 7時) (レス) id: 4dface175c (このIDを非表示/違反報告)
透空(プロフ) - おとさん» そうですかね?笑 好きって言ってもらえて良かったです。雑談はネタが浮かんだら書くって感じなので良かったら今後も見てくれると嬉しいです! (2019年1月11日 5時) (レス) id: 3bf9f61dac (このIDを非表示/違反報告)
おと(プロフ) - 透空さん» 私的には好きな終わり方…全然雑じゃないです!後、最後の雑談大好きですw (2019年1月10日 1時) (レス) id: 53811352eb (このIDを非表示/違反報告)
透空(プロフ) - おとさん» 感動…なのかな?笑 すごく雑な終わり方ですよね…。コメントありがとうございます! (2019年1月4日 6時) (レス) id: 3bf9f61dac (このIDを非表示/違反報告)
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