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ヤクザの事務所前に着くと、伊藤くんは1度深呼吸をして私を見る。
「じゃあ、Aちゃんはここで待ってて」
「...伊藤くん、無理しないでね?危ないと思ったら逃げてね?」
「分かってるよ、大丈夫だから」
そう言って笑う伊藤くん。多分伊藤くんはどんな状況になっても逃げない。逃げるような人じゃない。...怪我しないといいけど。
そう思っていると、後ろから声が聞こえた。
「伊藤くん、もう怪我は大丈夫なのかい?」
「三橋...、裏切り者が今更なんだよ」
そこにいたのは三橋くんで。伊藤くんの言葉を聞くと何も言わずに頭を触って、カツラを取った。
そこから現れたのはいつもの金髪。メガネも取って地面に落とす。
「は、え!?」
「お前なぁ、俺がツッパリ辞めるわけねぇだろうが。相棒ならそれぐらい分かれ」
「分かるわけねぇだろ!!てか言えや!!」
「敵を騙すならまず味方からってな。真面目なフリして夜な夜なヤクザ襲って拳銃やら奪ってたんだよ。...ほら、着替えろ」
「は?」
伊藤くんに手渡されたのは真っ黒なスーツ。三橋くんは真っ白なスーツを持ってる。着替える...?
「なんだA、俺の着替えがそんなに見たいの?えっち〜」
「なっ、ち、違う!!見たくないし!」
ニヤニヤ笑いながら言う三橋くんから顔を逸らす。...着替えるって、ここで着替えるの?外だよ?まぁ人通りは少ない道だけど...。
しばらくしてもう見ていいぞ、と言われ顔を上げる。そこにはヤクザの物であろうスーツに身を包んだ2人がいた。
「か、かっこいい...」
「だろ?」
「似合ってるよ二人とも!すごい!」
「へへ...ありがとう、Aちゃん」
三橋くん、真っ白なスーツ似合うなぁ。伊藤くんもかっこいい。なんて思っていると、急に真剣な顔で私を見る三橋くん。
「A、いいな。俺らのこと気にして待っとくのはいーけど、危なくなったらお前も逃げろ」
「...うん、分かった」
「よし、じゃあ行ってくるわ」
そう言ってぽんぽん私の頭を撫でると2人は事務所の中へと入っていった。
残された私はただ2人が怪我をしないことを祈ることしか出来なかった。
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ソウ - はじめまして!ソウです!読ませていただきました!めっちゃ面白かったです!これのおかげでまた今日から俺は大好きになりました!ありがとうございます!!( ≧∀≦)ノ (2019年8月21日 20時) (レス) id: 8344a9dd37 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まるる。 | 作成日時:2019年4月30日 14時