バイト ページ39
ここには様々な客が来る。
スラム街の荒んだ表情の男や目付きの鋭い女、はたまた薬を求める富豪の執事と、本当に様々だ。
だが、てんちょーが物を売るときに必要とするのは、金ではなく『
私にもそんなPがあるらしく、たまにぎらぎらとした目でこちらを見ている。……お給金を増やして貰えるなら、Pをあげてもいいだろうか。
初めの頃はそう思っていたが、てんちょーは住むための部屋を提供してくれた。その家賃として、私のPを渡すことで交渉が成立したから、それで落ち着いた。
それにしても、本当に様々だ。
遠目だったから見間違いだったかもしれないが、……客に、武装警官が見えた気がした。
先日、グーフォの言った通り、ラプラスピアノコンクールが襲撃された。だが、テロリストらは全員逃げ、バロウズ市長が深手を負ったらしい。
そして、国から対テロリスト部隊・OCTが派遣された。街中武装隊員ばかりで、迂闊に歩くこともできない状況だ。
何故OCTの隊員がわざわざこんなところに物質調達に来るのか分からなかったが、てんちょーからすればいい金ヅル、いや、Pヅルだろう。
店に来るのは
────だって、OCTには、あの人がいるじゃない。
ふと鏡を見ると、あの人によく似た顔が映っていた。……私の、顔だけれど。
ああ、ここに来るのが部下だけだといいな。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そんなある日。
裏で薬剤に必要な、ちょっと刺激的なキノコをいじっていると、表に客が来たようだった。てんちょーが接客をしている。
よく来る、キズぐすりの客だろうか。それとも、他の薬を求めてきたスラム街の人か。
答えは、そのどちらでもなかった。
「いら…………ませ…のだ」
「挨拶…いら……。お前、…の女………ねぇか」
女? なんの話だろうか。思わず窓を覗こうとして、ぴたりと止まった。
その男は、OCTの隊員だった。しかも、部下ではない。
────あの勲章は、確か『小佐』のものだ。あの褐色肌の大柄な爺さんは、そんなに位が高いのだろうか。
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