#28 見捨てない ページ35
「ゲホゲホ、ゴホッ」
『ん……フーゴ? 大丈夫なの?』
「大丈夫……ではねぇな、ゲホッ……」
見上げれば夜空、周りは火の海。
私はフーゴに庇われていた。
右足と背中が痛むが、あの爆発の中この程度の怪我で済んだのだ。フーゴには感謝してもしきれない。
「……サイレンが聞こえるな。おいA、立てるか?」
そう言われ、地面に手をつき立ち上がろうとする。
しかし、右足の負傷が思ったより酷かったようで、力を入れると、声にならない悲鳴が出たと同時に膝から崩れ落ちた。
『っ! 痛い痛い痛い! やばい痛いんだけど絶対これ折れてるって!』
「まじかよ……じゃあ俺が運んでやるからさっさと逃げるぞ」
フーゴだってかなり傷を負っているはずだ。あの時のように私を俵のように抱え上げて逃げるのは辛いと思うが……。
『って、ちょっと! 何この運び方! やめて!!』
「文句言う元気があるなら自分で歩け! この方が楽なんだ、我慢しろ」
右腕が背中の肩あたりにまわされ、左腕は両膝を抱え込む。
これは……俗に言う、お姫様抱っこ……だろうか。
かなり恥ずかしいが、足をバタバタさせる気力も残っていないし、降ろされたらたまったものではないので大人しく抱かれておくしかなかった。
そもそも俵抱きで運ばれる方がお互いの体力的にもきついよな……という結論に至ったとき。
燃える瓦礫の中に、見覚えのある赤毛を見つけた。
『あ、あれ……! アメリア、あのままじゃ死んじゃうんじゃ……!』
「俺らが勝ったんだ。劇的な最期だろうよ」
あんな話を聞いてしまえば、もうアメリアを放っておくわけにはいかない。
私はジタバタともがき始める。フーゴが必死に止める中暴れ続け、彼の腕から抜け出した。
瓦礫の中を這って、アメリアの元へ辿り着く。
『アメリア!』
「……Aさん……?」
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作者名:cc | 作成日時:2017年12月28日 10時