【被虐のノエル】愛したい、愛せない【フーゴ・ドレッセル】 (ページ25)

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#19 耐えられないページ25

……………。

………熱い……。

「A」

……………………………？

………この声………。

「A！寝てんじゃねぇ！」

『……フー、ゴ』

ゆっくりと、視界が開ける。意識は、まだぼんやりしたままだけど。
……強い刺激臭がする。危なそうな薬品の匂い……。

『……！フーゴ！？』

朦朧とする意識の中、ぼやけた視界に、口の端から血を流すフーゴを捉えた。
私は所々が倒壊した建物の中に横たわっており、フーゴは床に開いた大穴の下＿＿１つ下の階からこちらを見ていた。
ガスマスクの肝心の口元が、何かで溶けてしまったかのように刳れ落ちている。
離れた場所にいるのではっきりとは確認できないが、彼の息は荒く、非常に体力を消耗しているのがわかる。

「眠り姫が目覚めてしまったわね……ドレッセルさん！彼女を助けたいのでしょう……？なら、このおくすりの中に飛び込むしかないわね！」

あの赤毛の女の声が聞こえた。どうやら、私の後ろにいるらしい。
彼女の方を向こうと思い振り返ろうとしたとき、気がついた。
＿＿身体が、縛られている。
手術台のような台座の上で、フーゴがいる方を向いて横たわった状態で手足が拘束されていた。

ぴしゃ、ぴしゃ、と音が聞こえる。台の上にいる私には触れていないが、床は怪しい色の液体に浸っている。
赤毛の女が、私に背を向けて立つ。
そして彼女はフーゴに見せつけるように、真っ赤な林檎を手に持って、ゆっくりと床の液体に浸した。

『……！？』

林檎は、みるみるうちに腐敗していく。
果肉が溶け、汁が焼け、黒く変色していく林檎だったもの。
顔をしかめたフーゴに向けて、赤毛の女は笑いかけた。

「ものを分解する危なーいおくすり……触れたものはたちまち腐っていくわ。腐敗は燃焼とは違うわよね？いくらあなたでも、耐えきれないんじゃなくて？」

女は再びぴしゃ、と音を立て、その場でステップを踏む。
白い陶器のような素足を軽やかに動かしながら、楽しそうに。

「私は“調剤の魔女”アメリア。おくすりの影響を受けない身体を手に入れた、最高の薬剤師よ！」

裸足のアメリアは、幸せそうな笑みを浮かべて薬と戯れる。