#15 名もない ページ19
その後、私はトードに連れられ、2人の男性と対面することになる。
口元を緑のスカーフで隠した、白髪の陰気そうな青年、通称スラッグ。
丸メガネが印象的な、緑のネクタイを締めた誠実そうな男性、通称パイソン。
『なるほど、三すくみね』
「よく知っているね。トードとスラッグもA嬢を見習いたまえ」
パイソンはすごく紳士。でも、呼び方だけは解せない。
『A嬢って……なんか気恥ずかしいんだけど』
「おや、もしかして既婚者だったかな。これはすまない」
『未婚だけどさ。私、育ちがいいわけでもないし』
「育ちなど関係ない。私が呼びたいから呼ばせてもらっているだけさ」
女性の扱いが丁寧で素敵な男性だな、と思う。なんで彼が蛇なんだろうか……フーゴのネーミングセンスを疑う。
それに対して、スラッグの名付けには賛同できる。じめじめした陰鬱な感じが、まさに蛞蝓って印象だ。
「A歓迎のためにスプレーアート作っちゃおうかな……あ、それは毒ガススプレーだから、素人が下手に触ると、パナいことになるよ？」
『それは先に言いなさいよ、危ない！』
……正直絡み方がわからない。皆物騒なもの持っているし。
ちなみに、あの後トードに尋ねてみたところ、あのパイプは“ゴールデンスパイクドラゴン”という自慢の武器らしい。振り回すのだろうか。殺傷能力は高そうだ。
しばらく雑談に花を咲かせていると、背後から見慣れた緑色が接近してきた。
「お、パイソンにトードにスラッグ……それと、Aか」
『フーゴ、ここ物騒だよ。なんで皆武器構えてるの』
「そんなもん当たり前だろ。お前も何か持つか？」
「私が何か用意しよう」
遠慮しておきます、と言いパイソンが差し出そうとした片手銃を軽く手で止めた。そんなもの渡されても、使いこなせる気がしない。
「とは言っても、Aは何で戦うつもりなんだ？」
『……やっぱり、なにか武器が必要かなぁ』
「そりゃそうだろ。俺の隣に着くんだからな。明日も爆破しに行くから付いてこいよ」
『聞いてないんだけど……！ていうか流石にあんたの隣に着く気は無かったし』
フーゴの自分勝手な物言いに言い返すと、軽い口論が始まった。まあ言動に関しては私も人のことを言えた立場では無い気がするが。
「俺の隣に着かなきゃ魔人名もないお前ができることなんてねーよ」
『それは……そうだけど！ 名前は関係ないでしょどれだけこだわるの！』
「いい相方を見つけたようだね」
『「誰が！！」』
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作者名：cc | 作成日時：2017年12月28日 10時
