【UT×鋼】大好きな地下世界で、憧れの国家錬金術師と“平和”を掴み取ります。【長編夢小説】

【第１１．５話】狭間の切望 ページ19

――side


人は、何かの犠牲なしに何も得ることなどできない。


言い換えれば、

何かを得ようと欲すれば、必ず、同等の対価を支払わなければならない、

ということだ。


でも、この二つの文章の意味は似ているようで、少し違うと、僕は思う。



前者は、犠牲という言葉の意味から、何かしら相応の痛みや悲しみが伴う必要がある。

例えば、誰か大切な人が人質に取られて、命を救うためには相手の要求を飲まなければならないとする。

当然、要求される側からしたら、それらは理不尽きまわりないことに違いなく、

“犠牲を払わされる”

というマイナスの方向に考えるのは自然だ。


あるいは、その人を助ける為ならば、

“どんな犠牲を払ってでも”

成し遂げてやろうと思うだろう。



しかし、後者は、必ずしもそうではない。


例えば、ある商品を欲しいと思うなら、代金さえ支払えばそれは手に入る。

この場合、誰かに脅されたとか、本当は生活費等をとっておかなければならないが、それでもそれを手に入れたい、だとか、そういった状況でもない限り、敢えて

“自分のお金を犠牲にした”

なんて言い方はしないだろうし、そうネガティブに捉えることも稀だろう。

僕の大好きな言い方をするならば、所謂、“等価交換”ってやつだ。




さて。

では、この二つの意味に関して、“この世界”に焦点を当てて考えた場合……


世界を救い、平和を得るために、

“犠牲”を払うのか。


それとも、新たな可能性を見出してそれに挑み……


“対価”を払い、掴み取るのか。




ものは言い様だ、なんて言葉はあるし、捉え方は人それぞれだろう。


でも、少なくとも僕は……

この大好きな世界に“犠牲”なんて必要ない。

そう思うんだ。




だから、君たちが来てくれたのは、本当に驚いたし、心苦しいけれど、それ以上に嬉しかったんだ。


努力という対価を払い、強さを手に入れた少年、エドワード。

そして、本当に優しい心を持つ女性、A。



ああ、エドワードはもう少し、この世界に慣れる必要があるね。

Aは……その優しさが、“自己犠牲”という名の諸刃の剣とならないか、とても心配だ。

でも、二人が寄り添えば、きっと補い合えるはずだ。


それに、行き詰まれば、“彼”にも助力をさせるから。



……だから、ごめんね。
どうか頼んだよ、二人とも。


無力な僕の代わりに、

この世界に、暖かな希望を――

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