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「OKです!ありがとうございます」
スタッフさんの明快な声が響き、ロケは終了。
一旦ふたりでロケ車に戻る。
「……っ、は……」
ドアを開けて乗り込んだ瞬間、糸が切れたようにシートに倒れ込む神ちゃん。
わ、思ってたよりやばそうや。
「神ちゃん、マネージャー呼んでくるな?この後オフ?」
「……おん」
「わかった、ちょっと待っとってな」
この後仕事と言われたらどうしようかと内心ヒヤヒヤしていたのでとりあえず一安心。
いや、何も安心できる状況ではないけども。
「マネージャー?このあと神ちゃん家まで行く?」
「行くよー!のんちゃんもこの後オフなんだっけ」
「おん」
「どうする?一緒に家まで送ろっか?僕もこの後珍しく自宅作業だから時間あるんだよね〜」
「あー、それなら神ちゃんを早急に家まで送り届けて欲しいかも。熱あんねん、神ちゃん」
「え!うそ!?すぐ車向かうね!」
溌剌なマネージャーの顔に焦りが滲む、
担当タレントが身体壊してんねや、そりゃ焦るわな。
車に戻ると、やはり彼は力が抜けてぐったりしている。
「げほ、っえほ、っ、ぅ」
時折重苦しい咳き込みが聞こえてきて、この上なくしんどそうで。
「ゆっくりでええから答えてな、神ちゃん」
そんな彼の熱い背中を擦りながら声をかける。
「今暑い?寒い?」
「よく、わからん、たぶん寒い」
「ん、吐き気はある?」
「だいじょぶ、」
「今、どこが痛い〜とかしんどい〜とかある?」
「あたまいたい、あと、声、だしにくい」
「おっけ、マネージャーに伝えるな?んで病院行きや」
「ん」
蹲っているためこもりがちな声を拾う。
彼の透明度抜群の声も、幾らかざらつき始めている。
「最近な、稽古で喉アカンくて」
弱々しく発せられる言葉は、彼にしては珍しい自身の弱さを吐露する内容で。
こういう時は甘やかすのがええねん。
まあ、末っ子気質の俺は甘やかし方ってあんま知らんねんけど。
「頑張ってるもんな、楽屋でもセリフ読んだりしとったし」
「でもさ、いややん、」
「え?」
「全然納得出来ひんくて、練習しまくって、でも身体壊しとったら意味ないやんかぁ……」
彼は、熱に浮かされてか、そうでないのかわからない涙を貯めてる。
ほら、やっぱり追い詰めすぎやねんて。
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作者名:岡本まどか | 作成日時:2023年7月10日 11時