《四十三匹》我が家── ページ44
「んで、改まってなんだよ、父さん」
部屋に入っても尚怖いままの父さんが黙りこくったまま十分位経ち、その重い空気に耐えかねた俺が聞くと、父さんが覚悟を決めた顔で、俺の顔をまっすぐに見て、口を開いた。
「…『俺』って、自分のことをいうんだな、Aは」
「はぁ…?まぁ、そりゃあ、ね」
なにか言ったと思ったら、突然意味わからん。というか、昔からだし。正確には中学からか。周りがそうだったし、流れで。
「あ、いや、すまん。突然意味わからんよな、忘れてくれ」
そんな意味の分からない父さんに怪訝な顔をしていたら、気まずそうにそう言いながら苦笑してから、また真面目な顔をして、
「Aも知っているとは思うが、この家は、古くからの武道の名門で、1人が家の存続と指導の為に家に残るのと、もう1人は将来重鎮になるであろうお方の専属の護衛についてきた」
知っているよな?と、言外に目を見てきたのでそれに黙ってうなずくと、父さんは話を進める。
「んで、お前たちの代で9代目だが、9代目が存続の為に翔、護衛関係はお前に任せようと考えている。翔は確かにお前より強いが…ハプニングに弱いからな」
「まぁ……」
兄さんは思考回路が残念な人だからな……。
「んで、ここからが大事な話でな、この話をする為に、あいつを置いてきた」
「母さんを置いてくる理由……浮気?」
と、聞いた所で、父さんが青ざめた顔をした。
一応、そんなことしないと信じてたのにな。
と、思った所で、何かが凄いスピードで横を通り抜け、父さんの方を見ると、
「あーなーたー?」
「ちっ、違う!誤解だ裕美子ぉおお!!」
見た目20代位に見える、綺麗な女性が、ニッコリと父さんに笑いかけて、襟元を掴んでいた。
「何が違うのかしら?ねぇ?」
「言葉のあやと言うやつだ!それに、Aの思い違いだ!」
「早く観念しなさ……って、あら?A?どうしてここに?」
「あー、それは父さんに仕事関係の話を持ち込まれて……だから誤解だ、母さん」
この、華奢な女性こそ、俺の母さんである。
というか、この厳つい父さんに、こんな若々しい綺麗な女性──母さんがくっついた事が驚きだが。
その前に、目の前の精悍で、厳つい男を華奢な女性が襟元を掴んでいる、という光景がシュールすぎる。
「やだもぅ、私ったら。それならそうと言ってよ。恥ずかしい」
「何度も言ったろうに……」
我が家は、父が母に尻を敷かれるタイプの家族である。
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はっせー!!(プロフ) - はい!(*'▽'*)頑張ります!駄作ですけどねw (2014年2月3日 18時) (レス) id: ac4e363c4e (このIDを非表示/違反報告)
雪兎(ユキウサギ)(プロフ) - ずっとこれ待ってましたァァ!!← これからも頑張って下さい! (2014年2月3日 17時) (レス) id: c8d0844819 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神 恭也 | 作者ホームページ:http://ma.yuden.heyano5ha5426
作成日時:2013年12月31日 1時