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「私ひとりで帰れるんだが」
「何言ってんすか!義兄さんが"試合後のボクサーは危ない"って言ってたっすよ!あ、あと明日はちゃんと検査言ってくださいっすよ!?」
「わかってるよ、うるさいな」
「またそんなこと言って…………それより、やっぱり凄いっすね、90秒で試合に勝つなんて」
「別に。減量で苦しかったから急いだだけだ。
それよりもう着いた。送ってくれてありがと」
「はいっす!じゃ、また明日!」
「ああ_____っ、つ」
「!センパイ!?」
私は着いたアパート__私の部屋のある2階目指して階段を登ろうとした時、かくん、と足が揺れた。崩れた体勢、即座に手すりに手をつけた。黄瀬が駆け寄ってくる。
「朱センパイ!どうしたんすか!?大丈夫っすか!?」
「騒ぐなよ、大したことじゃねえから。…………試合後の軽いパンチドランカー症状ってヤツ。ダメージを受けたボクサーにゃよくあるんだ。今日は綺麗に貰っちまったからな………」
「…………すんません、浮かれちゃって。センパイ、楽して試合してたわけじゃないのに…………」
突然黄瀬が謝ってきた。珍しいこともあるもんだ。私は頭を抑えながら言う。
「どうでもいいよそんなこたぁ。早く帰って寝ろ」
「…あの!」
「あん?」
カンカン、と鉄で出来た階段を上ってると黄瀬がまた声を掛けてきた。私は顔だけを黄瀬に向けた。黄瀬は__暗い顔で俯いてた。
「…………なんで、ボクシングをするんすか」
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作者名:O | 作成日時:2021年10月29日 21時