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◇
「おーよ。ボクシングの拳は狂気だ。頭を粉砕できる、臓器を潰せる………そんな中で戦うんだ、そういうことだってある。
それで泣く泣くやめて、障害引きずりながら人生送ってる奴だっている」
「………！」
黄瀬は顔を引き攣らせてる。………あ、これ朱のことを思い出してるな。そりゃあそうだよな。好きな女がそんな危険な事をしてると思ったら止めようって思うよな。けど、
「………朱は、やめねえよ」
「ッ、でも＿＿「あいつはそういう女なんだよ」………、どういう、ことっすか」
俺は手を伸ばすのをやめて黄瀬を見る。黄瀬は怒りにも似た表情を浮かべている。こいつの欲しい言葉を俺は知っているけど、言えねえよ。
「アイツ、昔からボクシングが好きだった。あー、俺達が16歳のころだからアイツは8歳くらいか？
そんときからずーーーーーっと、ボクシングのことばっかり考えてた」
「そうそう。ダチ1人も作らねえで1人でずっとシャドーしてるような可愛げのねえやつだった」
「あんときからあいつは変わらねえ。ずっとボクシングが好きで、かかえなきゃいけねえもんもその危険も全て背負ってる。
………そんな奴からボクシングを取り上げたら、どうなる？」
「……………………」
黄瀬は、黙る。いつもの軽口がない。きっと、考えてるんだろうな。
「…………俺達は、朱にゃ色々助けられたことがある。毎回馬鹿みたいなことで喧嘩して笑って練習して………だから幸せになってもらいてえ。
お前が朱を幸せにしてくれることでも、朱がボクシングで幸せ感じるでもどっちでもいいんだ。
どんな道であれ俺らはあいつを応援し続ける。それだけだ」
「＿＿＿＿＿＿＿ッ」
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作者名：O | 作成日時：2021年10月29日 21時
