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「板垣先輩、黄瀬になにしたの」
「なにも………ってか、僕が被害者なんだけどな」
「黄瀬は、こんなふうに何も無いのに怒らないよ。………なにをしたの」
「………センパイ、いいっすよ。ただ巫山戯てただけなんで!ね、板垣くん!」
「…………うん、そうだよ。巫山戯てただけ」
「…………………練習中だ、あんまり巫山戯るな」
「はーい。じゃ、僕は次朱ちゃんが鍛えてた子の相手するよ」
「ああ。存分に鍛えてやってくれ」
「ふふふん、よしきた!つってね!」
そんな軽口を叩きながら板垣くんは行ってしまった。
"朱ちゃんと時間も練習も共にしてる"
"………テメェにゃあの女の抱えてるモン受け止めらんねえ"
ズキン、…………と胸が痛くなった。それと同時に義兄さんに同じことを言われたのを思い出す。なぜ?いやそれよりも。
朱センパイとはいつも一緒にいるけど練習はいつも別々。けれども彼らはいつも一緒なのだ。羨ましい。けれど俺はバスケをしたい。じゃあ…………………
「………センパイ」
「なんだ?痛いところでも、あるか」
「ううん、そうじゃなくて…………俺のわがまま、聞いてもらっていいすか?」
「我儘…………?」
「………__俺を、ボクシングジムに連れて行ってください」
「…………!」
俺は拳を握りながら、先輩を見つめた。
センパイは今日一、驚いた顔をしていた。
挑戦
(黄瀬が真剣な顔してる、この顔に弱いんだ)
(バスケはやめない。けど、センパイのことも諦めないから)
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作者名:O | 作成日時:2021年10月29日 21時