#78 ページ31
＊
真っ暗な中、一人ぼっちでいる。周りには誰もいない。けれど。
「鷹村やべえよ」
「頭おかしい」
「や〜ね〜、父親のいない子は乱暴で………」
「娼婦の娘」
「お前はこれから鷹村の子として生きるんだ」
…………。
誰もいないのに、声だけがある。
暗闇に響いては消えて、また生まれてを繰り返す。
……………いつもの夢だ。寝るといつもこうして声だけの夢を見る。けれども仕方ないこと。私はいつだって人を不快にさせてきたから。
全部本当の事、言い訳出来ないくらい真実なんだ。それを否定する言葉なんて持ってないし、何よりもう慣れてしまった。
けれど。…………だけど。
なんでこんなに悲しくなるのだろう。なんでこんなに苦しくなるのだろう。寒い。うるさい。痛い。やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ……………………
……………あれ？
ふと、頭に誰かに触れられた感覚があった。その瞬間鳴り止まなかった声が消えた。暗闇に光が広がっていく。そして。
なんだろう。なんだか凄く、温かい……………
たくさんの苦しい、悲しいが消えていく代わりに胸が熱くなる。けど心地いい。
なんだろう。凄く、幸せだ＿＿＿＿＿＿…………
ふにっ、と何かが口に当たる。
……………………ふに？
妙な唇の違和感に、目を覚ます。目を覚ますと目を瞑った黄瀬がドアップに視界に広がって＿＿＿＿＿＿＿って。
「！？」
え、え、え、え。
黄瀬が離れていく。長いまつ毛のある瞳が開いた…………と思ったら目が合った。その瞬間穏やかだった黄瀬の顔が固まった。
「え、うわぁーーーーーーー！！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：O | 作成日時：2021年10月29日 16時
