【APH】短編集 二冊目

#2 ページ10

用もないのに話しかけるのも、余計にからかいたくなるのも、そういう気持ちを向けているんだといい加減自覚する。マジでなんでこうなったのか。全く分からない的な。


からかった時の反応を見るのが楽しい。笑ったり拗ねたり怒ったり、次々変わる表情がマジウケる。



「聞いてますか的な」


『あーうん』


「信用ならないんですけど」


『はいはい』



なんか扱い雑じゃね？そんな違和感をよく感じるようになった。前まで見えたころころ変わる表情は、俺とは反対方向を向いて全然見えない。
そのせいで、しょうもない不安が居座っている。正直には言えるわけないし、そんなことないに決まってる。
…………多分。


　

「………俺なんかした的な？」


『んー……ん？』



やっと振り向いたその顔は、拍子抜けしたアホ面。でもそれは面白いっていうか、なんか、心臓のあたりをもやもやさせるような、変な感じ。いつの間にか空いていた穴に、変な満足感が溜まってくみたいな。



『そんなことないけど』



一瞬だけ、何かをぐっと堪えてるような顔をした。困ってるみたいな、不快そうな顔。


そしたらまた別の方を向く。


なんでこっち見ない的な。普通に失礼だし、不自然。
やっぱ嫌われてんじゃね？
いらない不安が溢れてきて、ありえないのに余計な考えばっか頭を埋め尽くす。


そのせいか、口が勝手に動いていた。

　



「…………………なんか寂しい的な……」

　



あ。



『ん？』


「は？」



何言って、は、なんて？
脳内再生を繰り返す内に、無意識に出た言葉の意味を理解する。
恥ず。マジて何言ってんだ的な。こんなん引かれるし、いや恥ず。


取り消したい発言をどう言い訳しようか必死に考えてまくるけど、いい理由が見つからない。俯いた顔に汗が浮かびかけた。
嫌な顔してたらどうしよ。
そんな不安を抱えながらも覗いた表情は、なんか赤い。


赤い？



「…………顔赤すぎじゃね？」


『……いや、君と同じ理由だよ』



今度は顔は逸らさずに、お互いだんまりしたカオスな空気が流れている。
無言がなんでかむず痒くて、微妙な気不味さが考えを肯定してる気がした。


いや、ない。でも、めっちゃほっぺ紅潮してるし、ワンチャン？



「…ぁ、あのさ」



また適当な返事をされるくらいなら。ここで言っといた方がいい的な。



「ちゃんと言いたいことがあるんだけど」



まっすぐ向けられるAの目の中にいる俺が、なんだか赤く見えた気がした。

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