伊太利 #1(※物凄く変な話) ページ13
そこは楽園だ。
何もなかったんだ。何もかもが。地面も空も空気も無くて、体は風船のように宙を漂っていて、何も聞こえず、何も見ることは出来ず、何も触れられない、独特の感覚に襲われていた。宇宙はこのようなものだろうか。たしか、アメリカかロシアだったか、それとも日本か。宇宙へ可能性を乗せたロケットを飛ばしていた。
どうでもいい。今浮いているのは彼らではない。自分だけがこの場にいる。私が一番最初に宇宙へ飛び出したのだ。きっとそうだ。だって、ここには誰もいない。
すると、瞬きはしていなかったのにも関わらず、自分の足の下には砂浜が存在していた。どうやら靴も履かずに裸足でいて、指の隙間に砂粒が入り込むのが分かる。
水に濡れた。海だ。そこには海があった。いつの間に。足首までに浸った海水が適度な冷たさで心地良い。ここは楽園だ。天気もいい。晴天の下、光に反射する水面がきらきらとしてとても綺麗だ。ここは楽園だ。夢みたいに。
「行こ！」
後ろから現れた人物が横を通り過ぎると思えば、そのまま腕を引いて海に向かわせる。くるんとした浮き毛が飛び出た、笑顔が可愛い人だった。彼だ。そう、イタリアだ。
海に向かって進んで行き、海面は段々と膝まで上ってくる。このままでは服が濡れてしまうから、私は一度立ち止まる。
『濡れるからさ。ここまでにしよ』
腕を掴んでいた彼の手は、今や私の手を握っており、その言葉を聞いた途端、彼は強く手を握る。繋がれたままでは行けないよ。そう彼を説得すると、パッと容易く手を離し、一人でそのまま進んで行った。そんなに海に入りたいのだろうか。
「俺、すっげー泳ぐの速いんだ！見てて！」
『溺れないでね』
「大丈夫！海と結婚してるから、俺のこと守ってくれるんだ！」
へえ。結婚していたのか。ああそうだったと、記憶が後から蘇る。彼は海と結婚していた。だったら手を繋いだのは不味くないか。既婚者的には。
泳ぐのを見てと言ったくせに、中々泳ぎ初めない。彼はもう腰まで海に浸かっている。水着でもないし、泳ぎにくくはないのだろうか。そんなことも構わず向こうへ歩き続ける。歩き続ける？それこそ溺れるのではないか？
『ね、どこ行くの？』
彼の背中に問いかけた。しかし振り返ってもくれない。いよいよ体の半分が水の中。
『イタリア？』
再度声を掛ける。止まってくれない。だめだ。止まってほしい。止まって。止まって。だめだ。行ってはいけない。
溺れてしまうよ。
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夏(プロフ) - チョコさん» うわああ！！こんな、本当に読む人を選抜するような解読困難のものを好きだと言ってくださりめちゃめちゃに嬉しいです……！🥹🥹本当にこれはちょっと載せていいか悩みましたが、よかったです。読んでくださりありがとうございます😭✨ (2月15日 0時) (
レス) id: ebedb84d25 (このIDを非表示/違反報告)
チョコ(プロフ) - 以太利の夢のお話すごく好きです😭まず世界観が沼…欲望に漬け込んで、悪魔の囁きみたいな感じだけど善意(罪悪感あり)が胸にぎゅんとくる…😭小説で頭がふわふわする感じ、唯一無二で大好きです💕夏さんの解説楽しみです！応援してます！！ (2月15日 0時) (レス) @page16 id: 99327877d7 (このIDを非表示/違反報告)
夏(プロフ) - 箸レーゼさん» あれでもないこれでもないと試行錯誤を繰り返す内にこんなに待たせてしまって大変申し訳ありませんでした……そしてありがとうございます。態々お礼を頂いてテンションが可笑しくなるほど嬉しい気持ちでいっぱいです。リクエストありがとうございました😌✨ (12月3日 21時) (レス) id: ebedb84d25 (このIDを非表示/違反報告)
箸レーゼ(プロフ) - アッ………あばばば……………語彙力が宇宙の彼方に……… さすがにこれがこれは良すぎます😭感謝伝えるなっていうほうが無茶です…伝えさせてください…ありがとうございましたあああああ…！！！ (12月3日 20時) (レス) @page10 id: 6c5dc33c86 (このIDを非表示/違反報告)
夏(プロフ) - ぽてちさん» なんて嬉しすぎる言葉、思わずニッコニコしてしまっていました🥰🥰✨香くんのは「これでいいのだろうか…」とめっちゃ悩んだのでそう言ってもらえて安心感が半端じゃないです、本当にありがとうございます😭😭モチベ上がりました💪 (12月3日 20時) (レス) id: ebedb84d25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夏 | 作成日時：2023年11月19日 4時
