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セットカウント21−25、23−25。
善戦してはいたが、結局負けてしまった。
私には勝敗なんて関係ないが、当人たちにとっては嫌な結果だろう。気の利いた言葉なんて分からないから、余計なことを言うのは止そう……。
観させてくれた礼と感想くらいは言うべきかと思って部員を探していると、体育館の横で話をしている4人を見つけた。
田中とスガさん、澤村さんと、名前を聞き忘れた長髪の上級生。
何話してるんだと思い近付くと、そこそこ物騒な話だった。
「ガッてやってくるだけっすよ。ガッて」
お前、他校で暴力沙汰起こすんじゃないだろうな？
事情聴取を受けるのは御免だぞ。
「いや、いいよ。弱いのは本当だしな」
「……けど、言われっぱなしで良いんすか！？」
「勝てばいい」
ごちゃごちゃとした会話の中から飛び出した、切れ味の鋭いナイフのような端的な言葉。何故か、私の体の奥深くに、ぐさりと刺さったような感覚がした。
「単純なことだ」
「我慢しろよー。大会とか行くと割と言われるぞ」
「「堕ちた強豪、飛べない烏」」
けらけらと笑っている三人だったが、目は全く笑っていない。光が微塵もない。
少しの恐怖を感じて目を背けると、同じことを考えていたのだろう田中と目が合った。
怒らせないようにしないとなとアイコンタクトで通じ合っていると、田中が我に返ったように目を見開いた。
「いつから居たんだお前！！」
「いつって、さっきからだが。試合を観ていたから、その礼にな」
どうやらこいつは、そもそも私に気が付いてなかったらしい。少しでもこいつを面白いと思ってしまった私の脳はバグを起こしていたのだろうか。
澤村さんに声をかけ、軽くお礼を伝える。
「……で、どうだった？実際に見てみて」
「楽しかったよ。上手くは言えないけど、……綺麗だった」
好きでも嫌いでもなかったものを見て、楽しいと思えたことは私にとっては奇跡のようなもの。できるなら、それを本人達に伝えておきたかった。
無駄なことは言うまいとしていると、言葉足らずになりそうで不安だが……。
「それなら良かった。俺たちはいつでも歓迎するから、またいつでも来てくれ」
また、ね。
そう言われるととても嬉しく思ってしまうのは、やはり私も居場所に飢えているのだろうか。
あいつらと離れた後もまだ、このふわふわとした幸福感が心を満たしていた。
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森谷きのこ(プロフ) - ひよりさん» コメントありがとうございます。気を付けているところやこだわっているところを褒めていただき、嬉しい限りです。細々とではありますが続けていくので、これからもよろしくお願いします。 (4月4日 22時) (
レス) id: 8dba170153 (このIDを非表示/違反報告)
ひより(プロフ) - 文章の構成、 情景や感情の表現、言葉選び諸々凄い丁寧で素敵でこの作品に惹かれました！楽しく読ませてもらってます！ (3月31日 1時) (レス) @page19 id: 67c39a707a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：森谷きのこ | 作成日時：2024年2月26日 10時
