ＨＥＬＬＯ，Part1 (ページ5)

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5.世界一の野菜炒め和也ページ5

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ドラマ主演が決まったのは、先月の話。

春にやってた翔ちゃんの次はまさかの俺で

マネージャーに訊いてみたら、コピーライターの役だとか。

フリーターの次はちゃんと就職してくれたのね。

よかったよかった。

俺は翔ちゃんと違って撮影始まる前から原作読んだりとか特にしないし。

まぁ今回も俺らしく、役に溶け込みますか。

と、ね。

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…ガラガラ

サッシのある引き戸を開けて中に入る。

仕事が終わって、帰路の途中にあるこの弁当屋さん。

店内に入ると、キャップをさらに深く被って

『いらっしゃいませ！』

店員のオネェチャンの掛け声を受けた。

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ツバの下からチラチラと厨房の方を伺う。

すると、奥にいたオバチャンが俺に気付いて

“店長”と書かれた手作り感満載のネームプレートを胸に貼ったその人は

丸っこい顔を膨らませてニカッと笑う。

和也「…野菜炒め弁当、一つ。」

ポケットから財布を取り出しながらボソリと言うと

『はい、野菜炒めですね？』

俺の注文を受けてレジに打ち込んだオネェチャンは厨房に向かって

『野菜炒めひとつーっ！』と、張りのいい声をあげた。

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この子よりも歳はいってる…か。

あんな盛大なコケ方した人、社会人で初めて見たわ。

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『いつもありがとうございますー。』

会計を済ませて、スマホをいじりながら待っていると

出来上がった野菜炒め弁当を持って厨房から出てきた店長のオバチャンが俺に言った。

和也「あ、いや…今日は早く仕事終わったんで。

ここの野菜炒めウマイし(笑)」

『あらまぁ、…シュウマイひとつオマケしておきましたよ(笑)』

和也「マジっすか？ありがとうございます(笑)」

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ここの野菜炒め弁当は、今まで食ってきた野菜炒めの中で一番ウマイ。

だから早めに帰ってこれた日とかたまに買ってる。

ガッツリしたものが苦手な俺にも丁度いいんだよね。

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買った野菜炒め弁当を持って

店長のオバチャンに小さく会釈を交わすと店を出る。

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あのオバチャン、俺がアイドルってこと気付いてるね。

ま、言い触らされない限り通い続けますけど。

帰ってメシ食ったら、何時までゲームすっかな。

もうちょっとでクリアできそうなんだよ…。

なんて考えながら

東京の少し乾いた夜空の下

片方の手をポケットに入れて歩く。

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今日の俺は、やけに上機嫌らしい。

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