18.消えない過去にドロップキック ページ18
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布団から出た私は、パジャマのままロフトと下の部屋とを繋ぐハシゴを降りる。
一人暮らしを始めた当初はここから落っこちたこともあったっけ。
ロフトとベランダ付きのワンルーム。
いつかの嫁入りのために、ちゃんと料理の練習ができる所にしたほうがいいって
みっちゃんのアドバイスで探しに探しまくったコンロが二つ付いたこの物件。
大して上達した実感は今の所ないんだけれども…。
トイレに行って歯磨きをして
食パン1枚で軽く朝食を摂って、収納ケースから取り出した服に着替える。
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パジャマのズボンを履き替える時
自分のふくらはぎにある傷跡が目に入った。
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縫い目がうっすらと残る一筋…。
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「･･･。」
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消えない、よね…そりゃ。
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脱いだズボンは畳んで、ユニクロのスキニーパンツに履き替える。
いつも通りのメイクを終えると、伸びた髪はバナナクリップで留めて
全身鏡で一度身だしなみをチェックしてから
テレビ台の所に置いてある写真立てに目をやった。
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みっちゃんの家にあるのとはまた別の
フレームの中で笑ってるお父さんとお母さんと
その間に挟まれてる小学生の私…。
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「…行ってきます。」
口角を上げて微笑んで見せてから、仕事用のバッグを掴んで家を出た。
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…それからハンカチを忘れたのを思い出して一回戻ってきた。
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―…
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それこそ今日私が履いてるユニクロさんほどじゃないけど。
むしろユニクロさんと比べられるほどじゃないんだけれども。
ブランドメーカーといっても、ウチの会社はそれほど大規模なものじゃない。
本州だけで50店舗足らず。
そのほとんどが関東圏内。
ウチから電車で1時間の本社も、全然小さい。
その正面玄関を抜けて、受付の西野谷さんに挨拶をしながらエレベーターに乗り込む。
私の職場は4階。
そこに到達する途中、2階でエレベーターが止まった。
他の部の男の人が乗って来て
軽い挨拶を交わすと、私と同じ階が目的なのか“閉”が押される。
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エレベーターのドアが閉まる直前
ふいに誰かが、エレベーターの前を横切った。
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「(あ…。)」
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濃紺のスーツを着こなしたあの人。
完全にドアが閉まった所で、視界にその姿が消える。
ほんの一瞬の出来事だった。
それから嫌な記憶が蘇る。
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なによ、噂をすれば…。
噂と言うか今朝ちょうど思い出してただけなんだけど。
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作者名：ハロ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/helloamnos/
作成日時：2013年10月22日 18時
