1.こんなはずじゃない ページ1
.
機材を運んだり、段ボールを抱えてたり、テレビ局の廊下を右往左往するスタッフさん。
その間を、衣装の掛かったハンガーラックをガラガラ押しながら潜り抜けていく。
とあるテレビ局の中。
目的地は、今度から始まるドラマのスタジオ。
ラックに掛かってるオリーブ色のスカートやプルシャンブルーのニットがゆらゆら揺れる。
ウチの会社の新作。
全部が全部キャストさんに着てもらえるわけじゃないけど
自分の好きな洋服って、見てるだけでも幸せ。
だからこの仕事を選んだんだもん。
.
でも実際、ここ…テレビ局に来たのは初めて。
これ運ぶスタジオって6階で合ってるんだよね？
ど、どうしよう…。
自信なくなってきた。
私の役目はこの衣装の管理。
でも、新しい場所に乗り込むのってチョット苦手。
任された以上、失敗はしちゃダメだ。
絶対にダメ、だめ…。
なんて考えちゃうから、自然と気持ちまで焦ってくる。
それが自分の悪い癖。
.
だから、
.
「あっ…！！」
.
何もない所で
私のバカ。
.
.
ガッシャーーーン！！！
躓いた足の引っかかったハンガーラックが倒れる。
しかも側にあった山積みの段ボールも巻き込んで、ガラガラと雪崩まで起こす。
「あﾞぁっ！！」
.
最悪…。
大惨事だよ、もう。
.
「･･･。」
足下に散乱した衣装と段ボール。
目の前の悲惨な光景にガックリ肩を落とす。
近くのスタッフさんたちは時折私に不審な目を向けるだけで、自分の仕事に手一杯。
誰も助けてくれる人なんかいない。
.
社会なんてこんなもの。
そう甘くないって知ってる。
自分でやった失敗は自分で片付けなきゃ…。
.
「(もう、最悪…っ。)」
衣装は？汚れてない？
大丈夫？
少しでも汚れとか破損があったら会社のイメージダウンにも繋がるし
どうしよう…。
ちょっぴり泣きたい気持ちに心の中で溜め息を吐いて
散らかった衣装と段ボールを元に戻そうとしゃがみ込んだ
.
.
その時だった。
.
.
「ﾌﾞﾌｯ(笑)」
.
.
聞こえた笑い声。
笑い声っていうより、吹き出すみたいな。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 889人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ハロ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/helloamnos/
作成日時：2013年10月22日 18時
