REAL _最初で最後の恋_

17歳。同じ部屋 ページ6

健二郎くんが妙に照れくさそうな顔で

"いっしょに住まへんか？"

そう言ってくれたのは7月。私の誕生月だった


まだ小さな部屋

2人で住むにはどうにも狭い部屋の中で生活する権利をくれた健二郎くんは私はもう既に

抑えられないくらい大切な人…に変わっていた


"唯一無二"

"永遠"

それから "運命" …。


愛を形容する言葉の全部が健二郎くんだけに向かって生きていた私に答えなんかは1つしかなかった


それでも笑ってありがとうなんて言えない弱虫な私は何度だって

いいの？
私でもいいの？

…いっしょに居てもいいの？

そう問いかけるしか出来なかった


健二郎くんの隣で生きる自信なんか何もなかったのは健二郎くんが少しずつ少しずつ "有名人" に生まれ変わり始めていたから…。


綺麗な人も可愛らしい人も

いくらだっているこの世界で私が健二郎くんに選んでもらえる事が恐れ多かったから…


それでも健二郎くんはそんなグズグズな私に

『ちゃうやん？お前やからやん』

そう言って変わらずに頭をヨシヨシって撫でた


…お前やからやん…



その1言がどれだけの力をくれてるか健二郎くんは分かってるのかな…って思った

渡してくれる鍵の重みがどれだけの愛を教えてくれてるのか分かってるのかな…って思った


そしたら泣き虫の私は相も変わらずに泣けてきた


…それでも

それでも私はこの頃にはそれが近づいていた事に気付かなかった


ただ。嬉しくて
ただ。幸せで

ただただ健二郎くんが愛しくてたまらなくて


…ずっとずっとこの人の傍に居たい……


夢中で心からそれだけを願った

それだけが私の夢の全部に変わった


健二郎くんが居てくれればそれだけで…

それだけで私の幸せは満タンだ！って心からそう思ってた


私が健二郎くんを "健ちゃん" って呼び始めるのにはそんなに時間はいらなかった


自然に
ゆっくりと

健二郎くんから健ちゃんに変わって

それから私は梨香ちゃんから梨香に変わった


それだけで嬉しかった

健ちゃんはもう既に私の生きる証になっていた


１７歳,,
18歳まであと僅か


健ちゃんが住む部屋と同じ部屋の鍵をプレゼントしてもらった私の心の中には

"いつか山下梨香になる事。"

…そんな夢が新しく生まれた……

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