REAL _最初で最後の恋_

三代目 ページ35

それからの私と健二郎の間には

"不安"と。
"嫉妬"と。

それから "孤独"


名付けるとしたなら
あまり良い意味を持つ時間は流れず

だから

私と健二郎は頻繁に喧嘩と呼べない喧嘩をした


それは全部が全部

私のわからず屋のせい…


"なんで他の人とキスなんかするの？"


それから始まる喧嘩は

健二郎の口からいつだって "‎ごめん" って言葉を出させたけど

ごめん…じゃ納得できない私は

何度も何度も
おんなじように健二郎に問いかけ続けた


ねえ。
なんで？

なんでよ？
どうして？


繰り返せば繰り返すほど自分もツラくなるの解ってるのに

繰り返すほど健二郎を責める事に解ってるのに

でも

涙も言葉もなんにも止まらなかった


そして

私のそんな言葉を受け止め続けた健二郎は

やがて

ごめん…を忘れたかのよう

"しゃーないやん。…仕事やねん"

吐き捨てるようにポツンと呟いた


"仕事やねん"

言われなくても本当は解ってた私は
健二郎の言葉が "開き直り" に聴こえて

そして

うるさい…って言われてるようにも聴こえて


「そんなの解ってるよっ！でもイヤなんだよっっ」

気づいたら声。荒げてた



しばらくの沈黙が拡がった

なんにも言葉がない時間が拡がった


そして

『なぁ。お前にとって俺はなんや…?』

健二郎の問いかける声が小さくひびいた



"俺はお前のなんや…？"

"今もお前には俺が三代目にしか見えへんか？"

"そもそも三代目ってお前にとってなんや？"


ゆっくり
ゆっくり

でも寂しそうな。それでいて苦しそうなその声に

その質問に

私は "解かんないよ" としか言えなかった


健二郎と
三代目、山下健二郎と

輪郭は曖昧で

でもその曖昧な輪郭は確実に私から自信を奪って

近付く度に

好きな程に

健二郎を遠く遠くに感じさせた


初めて私は

"どうしたって"三代目"なんだよ健二郎は"…

"あの頃とは違うんだよ"…って。言った

…言ってしまった…


『そっか…』

健二郎はそう言ってから

そやな。って
そうなんやな。って

小さく小さく言ってから確かに

…俺は三代目…やもんな…そう微笑った


哀しい笑い声を残して

"俺.お前のその気持ち解ってやれへん"

そんな言葉を残して

"また連絡する" 電話はゆっくり切れた


ガチャっと勢いよく切れた訳でなく

ゆっくり静かに切られた電話だから

だから私はその静かさの分

健二郎の中にある孤独を感じた


孤独を感じさせた私に

健二郎が言った "また" は訪れなかった

つもり。だったのに…→←キスシーン

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