俺の隣にはいつも… Season2

ラストシーン ページ6

(直人Side)

「……ごめん…」

行為の全てが終わったと感じた時


臣さんがそう言いながら流した一筋の涙




あんなに激しくて

あんなに荒れ狂った波みたいだった人が

流す涙は



俺の心の中の "責めるとか" "憤るとか"…
そういうモノをすべて洗い去ってしまう





シャツを羽織る臣さんの背中




あんなに激しかったのに


今はとても華奢な程に細く見えて




なんだか、自分の事を攻めてるようにも傷付いているようにも見えて




だから俺は言葉を失くしてしまう




…どうしてこんな事になっちゃったんだろう……



それは多分


いつも優しく見守ってくれた臣さんに

いつも俺が甘えて続けたから…



臣さんの俺への想いに気付いてあげる事も出来ず…いつも甘えてたから……




ここまで追い込んでいたなんて俺…全然気付いてあげれてなかった




『俺…帰ります……』



決して顔を見せることもせず背中を向けたまま
小さく呟く臣さんの声



俺は…

俺はどうしたらいいんだろう…


このまま見送ってしまえばもう2度と逢えなくなりそうな気がして

でも……引き留める権利は…ないんだよね…?





「……俺.本気で貴方が好きでした…自分でビビるくらい好きでした…めちゃくちゃ好きでした……だから」



＿もう無理に笑ったりしないで＿





俺を抱いてる時には1度だって口にしなかった "好き" の言葉を

そっと "残す" みたいにして言葉に変え続ける臣さんの声




身体のあちこちに残ってる痕より
寂しくて哀しい響きで俺の中に残っていくのは


それだけ本気で…届けてくれてるから……



それくらいは俺にだって解るよ




けど

「…また……また飲みに来てください……」




こんな事しか言えないでごめん…


でも

今は…


健二郎が残りまくってる俺には

これ以上…何も言ってあげられないんだよ…







『…ですね(笑)また夏希でも連れてきます』


背中を向けたまま笑ってくれる臣さんの声は

それ以上言葉を紡ぐ事なく



代わりに

カタ…んって



そう小さくドアを閉める音だけが続いた




これが俺と臣さんのラストシーン




あの瞳にもう2度と逢えないんだな…って思ったら




なんでだろうね




俺の頬にも一筋の涙が零れるんだ






『運命』『幸福』

『恋心』

『恋人同士』『相思相愛』





恋を縁取る言葉はこんなにたくさんあるのに


俺と臣さんの間にあるのはきっと


『涙』と『痛み』だけ…｡｡｡

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