芸能人.拾いました！ _２nd. Song_

最後に選べた優しさ ページ1

自分で言ったはずの
"別れよう" の言葉は

俺の遥か彼方から聴こえてくるかのように
遠く…遠く…響いて

…"俺が"伝えたハズなのに

誰か
"知らない人" が言ったような…気がした…

_『臣…?』_

振り向いて
俺の頬に両手を充てて

まっすぐ俺を捉える和葉の瞳

そこに映る俺は…
ゆらりと揺れていて。そして。霞んでて…。


…そっと手を伸ばしたら…届くけど…
それでも俺は…和葉をもう

…手放してやりたい…なんて

それは。… "間違い"…なのかな……?


『…なんで…』

小さく呟く和葉の声

それは今まで聴いた和葉の。どの声よりも
細く。頼りなく。

そして痛そうに響いて

俺がそっと抱き寄せてみたら


『解かんないよ…』

カタカタ震える細い肩でそっと俺を責める…気がした

でも。

『臣が何に傷付いてるのか…解かんないよ…』

そう呟く声で
_"行かないで"…って。云っている気も…した…


けど

俺が出来ることはもう。
たった1つしかない…そんな想いも…消せなかった

_和葉を解放してやる事_



『…臣が抱えてる痛み…私にも分けてよ…』

小さく
消えてしまいそうな和葉の肩


そんなカタカタ震える肩先を見つめながら俺は
初めて "思ってしまった"

_" 出逢わなければ " ＿


出逢わなければ…

俺が和葉に出逢わなければ…

そして. "始めなければ"

"終わり" もなかった…かも…知んないね…

けど

"始めた"のは俺…だから
きっと。 "終わりにするのも" 俺…なんだよ…

傷つけてしまうけど。

…そんな事…解ってるけど。

けど。
俺は…これ以上和葉を傷付けたくないよ…

だって俺は
どうしたって "三代目" だから…

"芸能界"から出られなくて
"芸能人"じゃなきゃいられなくて

そして
そんな枠組の中でしか生きれない生き物…だから


いつも

守ってやりたいと思う度に
愛していたいと思う度に
傍にいてやりたいと思う度に

…叶えてやれない自分に気付かされるんだ…


クリスマスだって
年明けだって。誕生日だって

今までだってずっとそう。だったでしょ…？

"ここぞ" って日にはいつも仕事で

和葉が身体を崩した時ですら俺は何もしてやれなかった

そんな毎日の中に独り。置き去りにするだけして

なのに。身勝手に傷付けてしまう

そんなの…もう…俺が.うんざりなんだよ…


『やだよ…』_

小さく見上げる和葉の瞳に俺が最後に "選べた優しさ" は

"飽きたの" なんて
最低なヤツを演じる事…だけだった

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