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山下さんの写真をファイルに収めて
『ほんに楽しかったわ〜』
そうイタズラに微笑ってる女将さんに
ほんの少しだけ皮肉を込めて
「…私もいろいろ楽しかったです」そう挨拶して
民宿 "やました" を後にする私に
『意地悪してしもうて堪忍な』女将さんはそう言ってから
『最初っから南さんの事が気に入ってしまったんどす…そやから息子の恋人になってもらいたくて、気にさせよ、思うてあんな嘘付いたんどす…そやけど四季さんは私のイタズラなんてなくても健二郎の事、好きになってくれはったんかも知れませんなぁ』 なんて突然云うから
私の頬はまた紅く染まってしまう
あれから
写真を撮らせてもらったあの日から
私は山下さんに一度も逢っていない…
…それでいい…と…思う…
だって今、逢ったら私はやっぱり好きだなと思ってこの街を離れるのが寂しくなってしまうから…
だから
「…よろしくお伝えください…」
こう伝えるのは1つの愛のカタチ…だと思う…
もう逢えないけど "お元気で"…
そして
思い出が濃すぎて多分もう来れないけれど
"また来ます" …
『最後に八坂さんに御参りして帰らはったらどないやろ…』
女将さんが少しだけ寂しい顔で云うから
私は "そうですね" そっと頷いてみせた
だって思えば今まで
八坂神社に行くのは御参りのため…じゃなくて
恋したお狐様に逢うため_だったんだもん…
最後くらいは
女将さんが言うようにきちんと
"遅くなりました" ってお詫びして
"今度こそ素敵な恋を" なんて
…そおっとお願いしてみようかな…
だって八坂神社は_縁結びの神様_だから…
「それじゃ行きますね」
女将さんにそっと頭を下げて
今度は御参りするために八坂神社への路を歩く
思い出すのはあの祠
何度も何度もお狐様を呼んだあの坂道の途中
稲荷寿司のすっぱい匂いと
お煮しめの甘辛い匂い
それから…お狐様の…
いや。山下さんのあのやんちゃな笑顔…
…2週間だけ…だったけれど
確かに恋をした都。_京都_
私が歩く先にスルリと着物が横切って
導かれたように追いかけた私の両足_
もし山下さんだったなら…
でも
「あれ…?」 曲がり角の先には誰も居なくて
代わりに
「四季ちゃん!」
聴こえたのは正真正銘、山下さんの声_
駆け出して
近付いて
それから息を切らしながら
「私.京都に来て良かったです」…伝えた言葉
_健二郎さんに逢えて良かったです_
山下さんは嬉しそうに微笑って
それから躊躇うみたいに頭を撫でてくれた
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梨香(プロフ) - atokさん» こんにちは!コメントありがとうございます!春夏秋冬4つの話を考えた時、隆ちゃんは切な系にしよう!と考えていたのでそんなお言葉本当に嬉しいです!これからもよろしくお願い致します!! (2019年10月20日 11時) (レス) id: 64c500100f (このIDを非表示/違反報告)
atok(プロフ) - せつない冬の恋物語が暖かい涙のラスト良かったです。車を運転する隆二さんの腕。ずっと見ていたい! (2019年10月20日 3時) (レス) id: b336124363 (このIDを非表示/違反報告)
sachi(プロフ) - 梨香さん» 梨香ちゃん、こんにちは。う~うん、全然いいよ。泣きようなお話になるかな。梨香ちゃんのペースで楽しんで書いてね♪。よろしくね(*^-^*)☆ (2019年10月18日 12時) (レス) id: c2612b7e58 (このIDを非表示/違反報告)
梨香(プロフ) - sachiさん» さち!おはよう!返信おそくなってごめんね。新作はぼちぼちと進めていく予定!健二郎ファンのさちには悲しいお話になるかもだけど、これからもよろしくね! (2019年10月18日 9時) (レス) id: 64c500100f (このIDを非表示/違反報告)
sachi(プロフ) - 梨香さん» えへっ(*´∀`)梨香ちゃんの書くお話ほんと好きだし☆新作、健ちゃん!ありがとう( ;∀;)嬉しい♪またワクワクして読んでいくね! (2019年10月12日 16時) (レス) id: 1986c7b750 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梨香 | 作成日時:2019年9月28日 0時