kirin *迷子 ページ39
「迷子か…」
本ではありきたりな展開。久々に東京へ降りて銀座と新宿を堪能したあとの事だ。日も暮れてきたし、明日は早朝から仕事があるし、と早くホテルへ向かおうとしていた矢先、降りる駅を間違えたのか訳の分からない場所に来てしまった。
「さて、どうしようか」
携帯は充電切れ。地図はない、見回してもここが何処なのかわかる掲示板もない。幸いあたりには人はいる。尋ねるのもいいが、生憎話しかけやすそうな人はいない。疲れきった顔のサラリーマン、怖い顔でスマホを弄る学生らしき若者。
「あー」
はやく、コーヒーが飲みたい。
「あの…」
「えっ」
か細い声が真後ろで響く。俺は少し驚きながらも振り向いた。
「間違ってたら失礼なんですけど…あの、迷子、ですか…?」
ああ、神様。救いをありがとう。
「いやはや、申し訳ない」
「大丈夫ですよ。明らかにふらふらしてらっしゃったんで。どこからお出でになられたんですか?」
「青森です」
その言葉を聞いただけで彼女はふわっと花を咲かせたように笑った。「青森!」と少しだけ声を上げて。
「私、ファンで応援してる人が青森県出身の方なんですよ。うわぁ…いいですね、青森」
「へぇ青森県出身って結構珍しいですね」
「そうですね、なかなか聞かないです。でもその人、今も青森県に在住されてるんですよ」
…ん?
「歌手、ですか?」
「いえ、あーでも知らないと思います」
電車に揺られながら、彼女は照れたようにはにかむ。
「青森のりんご、食べたことないんですよね。死ぬ前までには1度でも食べてみたいです」
「ふふ、そんなもんですか。いつも食べてるんで感覚はにぶりますね。」
電車に揺られ揺られ、俺は駅に降りた。ここからの道は彼女に教えて貰った。彼女の家はまだ先にあるらしく、電車からは降りなかった。
「じゃあ、気を付けて下さいね」
「本当にありがとうございました。」
「また、何処かでお会い出来たらいいですね。」
「………いつでも会えますよ」
「………え?」
「それでは、ごきげんよう」
今度会うときは、貴方のその拍子抜けた驚き顔をゆっくり覗き込みたいものです。
『ごきげんよう。今日は久々の東京でした。迷子になって、スマホも充電切れ、と面白いこと続きでしたが、可愛い可愛い天使が助けてくれましたよ。また迷子になりたいですね( ´∀`)b』
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狩人ノ影*(プロフ) - 桜田さん» ありがとうございます!ひらの人気は衰えないですね。嬉しいお言葉もったいない限りです。これからも是非よろしくお願いします(-ω-) (2016年9月7日 20時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
桜田(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます!ヒラの短編よかったです!キヨの好意が垣間見える感じが素敵でした(;_;) (2016年9月5日 19時) (レス) id: 20ab6aeafe (このIDを非表示/違反報告)
狩人ノ影*(プロフ) - 龍谷さん» ありがとうございます!!リクエスト承りました(^ω^ )お時間を頂きますが、必ず上げますので気長にお待ちください。 (2015年12月26日 21時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
狩人ノ影*(プロフ) - おにぎりさん» ありがとうございます!!とても嬉しいお言葉勿体無い限りです。これからもぼちぼち更新致しますのでよろしくお願いします! (2015年12月26日 21時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
狩人ノ影*(プロフ) - るななんさん» 解説ありがとうございます!!私の説明より遥かにお上手で、お手間をかけてしまい申し訳ありませんm(__)m読んで下さってありがとうございました! (2015年12月26日 21時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:狩人ノ影* | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tomoka0315/
作成日時:2015年4月23日 21時