【実/況/者】君が消える前の約束事。【日替わり】

10種類の結果パターン

＿＿お願いだから、1人にしないで。 - 2024年5月8日

To day *.｡Kojima



いつも騒がしくて、バカ脳天気で、めんどくさいことに私達を道連れにするあのバカはどこに行ってしまったんだろう。



「YOUー！」



目の前でプレイボール！、と言っている男は私の知っているコジじゃない。

誰、誰なの。
私のコジに成り済まして、私に愛されたかったの？

残念ね。私はたった一人の人しか愛さない。
コジしか愛せない。



「…おはよ、コジ。調子はどう？」
「うー…ん。…いいよ！」
「本当？」
「だあいじょうぶだって！」



へら、と眩しい笑顔で笑うのは前と変わらない。
私の好きな笑顔。

それを見ただけで少し安心したのはいつもこの笑顔に救われてるからなのか。



「…ねえ、本当にセピアさんたちに言わなくていいの？皆心配してるよ？」
「いいんだよ。それで」
「どうして？」
「気持ち悪いだろ。触れたもんが金になるなんてさ。」
「気持ち悪くないよ」



そう？、と先程とは別の笑顔で返される。
それはとても儚くて、今の彼にはよく似合ってるなんて貶し言葉。

そんなこと思っちゃうなんて余程私も可笑しくなっているのか。



「っ、ｹﾎ、ぁ…」
「、コジっ」
「大丈夫、だから…近寄んないで」



抑えた口から溢れ出たコジの血。
それは真っ白のシーツへと染み込んでゆく。

月を見ると緩和する、と先生が言ってたのを思い出してカーテンを開ける。
淡く輝いた三日月が真っ暗な空にぽっかりと浮いていた。



「っコジ、月見て、早くっ」
「う…大丈夫、だって…」
「全然大丈夫じゃないじゃん！」
「…セピア、さん達がいなくても、俺には、ｹﾞﾎｯ」



コジの言葉を遮るようにまた血が吹き出した。
そんなこと言っちゃダメだよ。



「コジ」
「…YOUがいてくれるから、寂しくなんかない、よ…」



すぅ…と息を吸って目を閉じた。
死んだかと思ったけど、寝ているだけみたい。

バッグから携帯を取り出して、コジの病室を出る。
ドアに背を預けて、落ちた。



『もしもし』
「……セピアさん？」
『YOUちゃん？どうしたのこんな時間に』
「…あのね、コジが…」



病気なの。
後ろから聞こえたガタッと物音が遮るように響いた。



「っ、コジ！？」
『コジマさんがどうかしたの？YOUちゃん？』



携帯を投げ出して、彼の肩を揺らしても目が開かない。
だんだんと冷えてくる彼の体に、絶望を感じた。

彼の横にはひっそりと針金雀枝が咲いている。




・
--花言葉 屈従

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