ushizawa* 風邪 ページ26
「風邪ひいた」
『しるかよ』
「ひどい、牛沢ってそんなやつだったのね。もう、この関係やめましょう。」
『お前とそういう関係になった覚えはない。』
スマホの奥、呆れたような声で私の対応をする牛沢はまたいつものように電話を切る。
「ちぇ、折角電話してやったのによー」
重い体を引きずりながら台所で水を注ぐ。「風邪ひいたやべぇ」とだけ呟いてベッドにダイブした。今日はなんとか朝に1本動画は上げたが、あとは編集する気力もない。
撮りだめできるはずの休日なのに、頭がガンガンしてゲームなんてしたらもっと悪化しそうだ。
「うおお、頭いてぇ」
くすり飲まなきゃ、お粥作らなくちゃ、脱水症状でも起こしたら、いろんなことが頭を巡るが私は静かに瞳を閉じた。
「……A」
冷たい。
「ん……」
額に冷たい掌が触れている。鼻の頭と耳たぶを赤くした牛沢がコートを着たまま私の顔を覗き込んでいた。
「熱、あるな」
「うしざぁ……?」
おう、と一言私の額から手を離しビニール袋をガサガサといじり始める。私にゼリーを見せつけ「食え」とわざとらしく頬に引っ付けた。
「ふへ、なんだやっぱ私のこと心配してたんやないか」
「うっせーな、ありがたく思え」
「思う思うーありがと」
冷たいゼリーを頬貼りながら、赤くなった牛沢のために暖房を入れた。そんな赤くなるほど寒い外を面倒くさそうに歩いてる牛沢を想像すると微笑ましくなる。
「うしざぁ」
「ん?」
私は軽く彼の手を掴む。
驚いた彼をよそに私はふと瞼を閉じた。
「ごめんね」
貴方は、私のかけがえの無い友達だよ。
牛沢の冷たい、大きな掌が私の手を握り返したなんて軽い想像をしながら意識が遠のくのを静かに感じていた。
*
「……何に対してのごめんねだよ」
俺が問いかけても、彼女はすやすやと深く眠っている。握り返した自分の手がやけに恥ずかしくて、冷たいはずの指先が赤く火照っていく。
あーあ、折角色々食べれるもの買ってきてやったのに寝たら食べられやしない。
仕方なくその場に座り彼女の寝顔を見つめる。熱があるせいで火照っている頬にぺたりとついた髪を優しく払った。こんなに綺麗な顔して、あんなに毒舌な動画を出してるなんて視聴者は知らないだろう。
繋がれた手のひらが、段々自分の気持ちを膨らましていく。
(牛沢のこと好きになって)
(Aのこと好きになって)
「ごめんな」
重なる想いにまだ、気付かない。
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狩人ノ影*(プロフ) - 桜田さん» ありがとうございます!ひらの人気は衰えないですね。嬉しいお言葉もったいない限りです。これからも是非よろしくお願いします(-ω-) (2016年9月7日 20時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
桜田(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます!ヒラの短編よかったです!キヨの好意が垣間見える感じが素敵でした(;_;) (2016年9月5日 19時) (レス) id: 20ab6aeafe (このIDを非表示/違反報告)
狩人ノ影*(プロフ) - 龍谷さん» ありがとうございます!!リクエスト承りました(^ω^ )お時間を頂きますが、必ず上げますので気長にお待ちください。 (2015年12月26日 21時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
狩人ノ影*(プロフ) - おにぎりさん» ありがとうございます!!とても嬉しいお言葉勿体無い限りです。これからもぼちぼち更新致しますのでよろしくお願いします! (2015年12月26日 21時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
狩人ノ影*(プロフ) - るななんさん» 解説ありがとうございます!!私の説明より遥かにお上手で、お手間をかけてしまい申し訳ありませんm(__)m読んで下さってありがとうございました! (2015年12月26日 21時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:狩人ノ影* | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tomoka0315/
作成日時:2015年4月23日 21時