sepia ＊朧月 ページ22
あの日もこんな夜だった。
朧月が目に映る。彼女の後ろ姿がぼんやりと浮かび「あーあ」とか細い声が懐かしく俺の鼓膜を震わした。
「……お久しぶりです、セピアさん」
うん、という言葉すら出ない俺に彼女は困ったように笑った。
「大丈夫ですよ。死んでますから。あなたは現実逃避をして幻覚を見ているわけじゃないですよ」
「本当に、Aなの？」
彼女は頷く。俺は1歩ずつ彼女に近づいた。まさか、会えると思っていなかった。もう二度と彼女と時間を過ごせるなんて思いもしなかった。
「なんで、」
「貴方に会いたかったんです。」
同じ気持ち。共有していた、感情。俺は人生の中で1番幸せで、辛い状況に佇んでいるに違いない。
「…おかえり。変わらないね」
「セピアさんこそ」
俺は昔と変わらず頭をなでる。嬉しそうに頬を緩ませながら、Aは「懐かしい」と口にする。
ああ、懐かしい。
まだ未熟な俺が家に帰ると必ず待っていてくれたことがまるで昨日のことのように蘇る。
「今日はお礼と、さよならを言いに来たんです。最後は貴方に会えないままだったから」
「うん」
分かる。消えていく彼女の面影に俺はあの時と同じ涙を静かに流した。幸せ者だ、愛していたから。
愛していたから、会えて嬉しくて離れるのがとんでもなく辛い。
「貴方が元気そうで良かった。」
変わらないその声で。
「ありがとう、あの時私を拾ってくれて。ありがとう、私を愛してくれて。」
「さよなら、本当に大好きだった。」
にゃーお。
手に触れていたはずのぬくもりはいつの間にか消えていた。
＊
「Aー？」
にゃー
「おー、寒いのに玄関まで。さ、部屋に入ろ？」
にゃう
「そうだ、こたつも出したことだし一緒に昼寝でもするか。」
にー
「あはは、顔に擦り寄るな。もうちょい離れて丸くなってくれよ」
にゃ
「はいはい、おやすみ」
こんな寒い日は寝てしまおう。
大好きな君といつまでも。
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狩人ノ影*(プロフ) - 桜田さん» ありがとうございます！ひらの人気は衰えないですね。嬉しいお言葉もったいない限りです。これからも是非よろしくお願いします(-ω-) (2016年9月7日 20時) (
レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
桜田(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます！ヒラの短編よかったです！キヨの好意が垣間見える感じが素敵でした（；＿；） (2016年9月5日 19時) (レス) id: 20ab6aeafe (このIDを非表示/違反報告)
狩人ノ影*(プロフ) - 龍谷さん» ありがとうございます!!リクエスト承りました(^ω^ )お時間を頂きますが、必ず上げますので気長にお待ちください。 (2015年12月26日 21時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
狩人ノ影*(プロフ) - おにぎりさん» ありがとうございます!!とても嬉しいお言葉勿体無い限りです。これからもぼちぼち更新致しますのでよろしくお願いします！ (2015年12月26日 21時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
狩人ノ影*(プロフ) - るななんさん» 解説ありがとうございます!!私の説明より遥かにお上手で、お手間をかけてしまい申し訳ありませんm(__)m読んで下さってありがとうございました！ (2015年12月26日 21時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩人ノ影* | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tomoka0315/
作成日時：2015年4月23日 21時
