fji *側にいて ページ17
「距離、置かない?」
彼女が突然言い出した。俺はもちろん、驚いて彼女の大きな瞳を見つめる。たぶん、酷く歪んだ顔になっているだろう。いつものように、「どうしたの?」なんて気軽に言えばいいのにこんな時だけ喉の奥に言葉が詰まったかのようになる。どうしよう、こんなとき彼女はどんな言葉が欲しいのだろう。
「...なんで、急に?」
頑張って精一杯出した声は酷く震えていて、泣きそうな声だと自分でも自覚するほど。俺がこんな声を出したのはたぶん初めてで、ずっと一緒にいる彼女も初めて聞いて驚いたのか目を丸くしている。それ以上俺がなんの言葉も出ないことをAは悟ってくれたのか、口を開いた。
「...フジが、遠いの」
遠い?何が。俺はずっと此処にいる。
仕事がないときはなるべく家に帰って、Aの側にいる。
「昨日の、生放送ね。ずっと見てて思ったんだよ。キヨと一緒にいて、有名なアナウンサーと普通に話してて、何万人もの人がフジを見てた。」
「うん。」
「私、フジと一緒じゃダメなんだ。フジはもっと有名になれる人だから、私じゃなんもしてやれない。だから、私もまたフジを『見る』人に戻ろうと思うの。」
苦しそうに、でも何か譲れないものがあるかのように彼女は強い口調で言った。
俺は黙って聞いたまま何も話せなくて。
何がいい。
彼女を引き留めるためにはどんな言葉が必要なんだ。
ひたすら自分の頭の中をぐるぐる回して今まで覚えてきた言葉を手探りで探す。
俺、こんなに無知だったかな。
「わがまま、言っていい?」
ふいに言葉がするりと口から飛び出す。本当に自分がいつものように考え尽くされて出た言葉じゃ無かった。
「俺、Aのこと大好きなんだ。」
「だから、一緒にいたい。ずっと側にいたい。それは『フジ』としてじゃなくて、何かしてもらいたいんじゃなくて、だから」
「とにかく、好き。君が世界一好き。側にいてください。離れたくない。」
今まで使ったことのないセリフ。こんなに必死にしがみついた言葉、俺の口から出たことない。
「フジ、私も好き。大好き。」
「私が好きになった人が貴方で本当に良かった。」
(´-ω-`)フジが口下手なのが書きたかっただけなのです
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狩人ノ影*(プロフ) - 桜田さん» ありがとうございます!ひらの人気は衰えないですね。嬉しいお言葉もったいない限りです。これからも是非よろしくお願いします(-ω-) (2016年9月7日 20時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
桜田(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます!ヒラの短編よかったです!キヨの好意が垣間見える感じが素敵でした(;_;) (2016年9月5日 19時) (レス) id: 20ab6aeafe (このIDを非表示/違反報告)
狩人ノ影*(プロフ) - 龍谷さん» ありがとうございます!!リクエスト承りました(^ω^ )お時間を頂きますが、必ず上げますので気長にお待ちください。 (2015年12月26日 21時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
狩人ノ影*(プロフ) - おにぎりさん» ありがとうございます!!とても嬉しいお言葉勿体無い限りです。これからもぼちぼち更新致しますのでよろしくお願いします! (2015年12月26日 21時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
狩人ノ影*(プロフ) - るななんさん» 解説ありがとうございます!!私の説明より遥かにお上手で、お手間をかけてしまい申し訳ありませんm(__)m読んで下さってありがとうございました! (2015年12月26日 21時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:狩人ノ影* | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tomoka0315/
作成日時:2015年4月23日 21時