【実況者】恋に落ちる１秒前【短編集】

sepia ＊なくして three ページ15

彼女の冷たくなった頬に触れる。くすぐったそうに笑うはずの貴方は、息一つしない。

「……好きだよ」

彼女は動かない。

「セピアさん」


振り返ると、泣きはらしたような目でつわはすさんとP-Pさんが後ろに佇んでいた。俺は必死に笑顔を作って「泣いてたの？」と、問いかける。



「……セピアさん、はAの最後を見送ったんですか？」
恐る恐るという風にP-Pさんが呟く。

「……ああ、そうだよ。一応夫だからね」

俺が言葉を発すると2人はもっと暗い顔をして俯いた。



「……ごめんなさい、俺が、帰りを送ってたら、こんなことには」

「つわはすさんのせいじゃないよ。現にこんな綺麗な顔して俺の元に帰って来てくれた。最後までゲーム楽しんでたなんて、彼女らしいよ」
彼女の手を握ったまま、俺は淡々と言葉を繋ぐ。



ああ、どうすればいいか分からない。君を失って、毎日がぽっかり穴が開くなんて、まるで頭の中を消されたかのように想像出来ない。

「……本当に、」


頬に、雫が流れる。



「綺麗だよ、A」


あの時、綺麗なドレスを着た君に告げたときと同じ言葉を告げる。目の前にいた2人はまた、目を赤くさせた。



「さ、もうすぐみんな到着するから人が来る前にAにお別れ言ってて。俺は、色々しなくちゃいけないからさ。」


2人の肩に手を置き、その場を離れる。途中でレトルトさんとキヨさんにすれ違った。レトルトさんは律儀にお辞儀をし、キヨさんは俺に構うはずなくAがいる黒い箱を見るなり全速力で駆け寄っていた。もちろん、誰よりも大きな声で泣きながら彼女の名前を呼んでいた。



…本当に、いい友達を持っていたよ。




「セピアさん、好きだよ」



「貴方の笑った顔も、真剣な顔も、ぜんぶ好きだよ」


「でもね、私、貴方の声が一番好き。だから私が消えても、ずっとずっと一緒にいて？ずっと貴方の声を聞いていたいの」





外に出て、息を吸う。





「………愛してるよ」




セピアさんが多いのは秘密(ｰωｰ)

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