abu *朝 ページ12
肌寒くなってきた。私は黄色いパーカーを羽織、冷えてしまった体を少しだけ温めるべく牛乳をレンジに入れた。タイマーがなるまでスマホをいじり、ニコニコ動画を開く。ランキングには先日彼が上げたばかりの動画がランクインしていた。
珍しく真面目にプレイしているせいか、所々イケボがある。ファンはそれを見逃していないようで、コメントには「イケボ!」という文字が並んでいた。
「……全く、いつもこんなだったらモテモテなのに。」
ふと呟いた独り言は虚しく、レンジのチン、という高らかな音にかき消された。私はゆっくりホットミルクを取り出すと、台所を後にする。
「……はあ、まだ起きてない」
いつもの通り、彼の部屋に行くとまたこちらもいつもの通りぐっすりと眠っている。私は少しだけため息をもらすと、彼の肩を揺すった。
「…アブさん。仕事、遅れますよ」
「………んー、おはよう…あと5分」
「ほら、寝ぼけないで下さい」
彼は本当に朝が弱い。そして、寒いのも苦手。このダブルパンチはきっと彼にはきついだろう。
「ホットミルク入れてきましたから、飲んで起きて下さい」
「あー……もらう」
のそりと起き上がって私の手からホットミルクを受け取る彼。そのとろんとした目、慎重にホットミルクに飲む口。全てがまた、綺麗で見とれてしまう。
「……ん、ありがと」
最後は思い切り飲み干すと、私に空になったカップを渡した。目を擦りながらのため、前があまり見えてないらしい。自分の目の前にカップを突き出した。仕方ないので、私から近寄りカップを受け取る。
「つかまえた」
はずだった。
私は思い切り彼の胸に飛び込んだ。いきなりの事で私は一瞬、頭の回転が停止する。この状況を理解し、顔が熱くなる時にはもう遅くアブさんの細くてガッシリした腕が腰に回っている。
「……ホットミルクもいいけどアブさん、こっちの方が好きだなあ」
おちゃらけたように私を強く抱きしめる。
「……もう少しだけこのままでいてあげますから温まったらすぐに起きて下さいね」
「珍しい、Aちゃんがデレるなんて。」
「うるさいです。」
それでも言葉とは裏腹に私の腕も自然と彼の背中に回る。アブさんは少しだけ躊躇したけれど、また同じように私の背中を撫でた。
「……大丈夫。アブさんはAちゃんのものだよ。だから、ヤキモチ焼かないの」
彼はいつも一枚上手だ。
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狩人ノ影*(プロフ) - 桜田さん» ありがとうございます!ひらの人気は衰えないですね。嬉しいお言葉もったいない限りです。これからも是非よろしくお願いします(-ω-) (2016年9月7日 20時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
桜田(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます!ヒラの短編よかったです!キヨの好意が垣間見える感じが素敵でした(;_;) (2016年9月5日 19時) (レス) id: 20ab6aeafe (このIDを非表示/違反報告)
狩人ノ影*(プロフ) - 龍谷さん» ありがとうございます!!リクエスト承りました(^ω^ )お時間を頂きますが、必ず上げますので気長にお待ちください。 (2015年12月26日 21時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
狩人ノ影*(プロフ) - おにぎりさん» ありがとうございます!!とても嬉しいお言葉勿体無い限りです。これからもぼちぼち更新致しますのでよろしくお願いします! (2015年12月26日 21時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
狩人ノ影*(プロフ) - るななんさん» 解説ありがとうございます!!私の説明より遥かにお上手で、お手間をかけてしまい申し訳ありませんm(__)m読んで下さってありがとうございました! (2015年12月26日 21時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:狩人ノ影* | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tomoka0315/
作成日時:2015年4月23日 21時