【実況者】恋に落ちる１秒前【短編集】

p-p ＊帰り道 ページ2

夕暮れが、濃くなってきた。
私は早足で校舎を出る。



「いけない...絵を描くのに夢中になっちゃって時間忘れてた。」





独り言を呟き、正門をでると伸びた影が私に近づいた。





「ぴーちゃん！」



「あれ、Aも今帰り？」




「ぴーちゃんも？偶然だね！」





同級生で最近仲良くなったPｰPことぴーちゃん。
彼はたしか、バスケ部だったはずだ。





「こんな遅くまでバスケの練習？すごいね」


「あはは、まぁ大会が近いからね。みんな張り切ってるんだよ」





そっかーと言いながら夕日にてらされる帰り道を二人で並んで歩く。





「...Aもコンクール近いでしょ？」




「そーなんだよね」



「僕、Aの絵好きなんだー。すごくキラキラしてるっていうか。」



「えへへ、ありがと。」





こんな風に素直にお互いを褒める事なんてぴーちゃん以外誰もいない。





ぴーちゃんはいつも私のことを見てくれている。
自分には彼女が居るなんて言っているくせに、私なんかと一緒にいてもいいのだろうか。






そんな彼は男らしいこともあった。



いわゆるナンパ、というやつに私が巻き込まれて。
ちょうど通りかかったぴーちゃんが不良達をいきなり殴るという、ね。




今思い出せばそれが出会いだったりもする。





彼は前から私のことを知っていたらしいけど。
私は同級生だということも知らなかった。






帰り道が段々暗くなっていく。
私は自販機で二人分の缶コーヒーを買ってぴーちゃんに渡した。






「ねぇA」




「何？」





「....僕好きな人が出来たんだ。」




「えっ彼女いたんじゃ無かったの？」





まさか、と彼が笑う。






「応援してくれる？」

「そりゃもちろん。」




いつもの優しい笑みで私を見つめた。






「好きだよ、A」






缶コーヒーが手から滑り落ちる。
私は一瞬思考が止まった。





「えっ私っ?!」




「知らなかった方が珍しいよ。だってクラスのみんな僕がAのこと好きって知ってるもん」




「そっそうなの?!」





「今日だって偶然じゃない。待ってたんだAのこと。」





少しの間無言が続くと彼は「あはは」と笑う。



「反応は思った通りだ。」




私の手を握る、彼の手が異様に温かくて。





「ずっと好きだったんだ。」







(まぁバスケの練習も今日は休みだったんだけどね)
(えっ何時間正門にいたの?!)
(３時間くらい)

aromahot ＊夢→←tuwahasu ＊構って

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