平行線 【ymin】

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隣の部屋での取材を終えて、衣装を着替えに楽屋に戻るとそこはもぬけの殻。


今はお昼だしみんなでケータリングルームにでも居るんだろうな。

予定通りならそろそろ呼ばれるだろうし昼は後だ、と考えながら衣装から衣装へと着替える。


着替えた時に少しだけ崩れてしまった髪の毛のセットをし直していると、

『あっ山田いたいた。俺終わったから、次』と大ちゃんが呼びに来てくれて、足早に楽屋を後にしてスタジオへ向かった。



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大体一時間くらいで撮り終わって楽屋への道を歩く。

楽屋の先のケータリングルームからは扉が閉まっているにも関わらず騒がしい声が聞こえて、まだみんなそっちに居るのかよと思いながらも、一旦荷物を取りに楽屋へと寄る。


誰も居ないと思って勢いよくガチャッと扉を開けた先に。


_____私服姿で奥のソファに座っている伊野尾ちゃんと、その隣には雄也が居て思わず声を出して驚いてしまった。




『…んぇ？山田か』

『おはよー。なにビックリしてんの』

「おはよう。いやみんなケータリングルームに居ると思ってたから…。あっ雄也、次だよ」

『ハハッ、そっか。でも俺もさっきまでそっちに居て、そろそろだと思ったからこっち来たんだよ。じゃあ俺行くね。伊野尾くんは早く着替えなよー』

『ほいほーい』




伊野尾ちゃんは出ていく雄也にひらひらと手を振る。雄也が出ていってしまえば、楽屋は静寂に包まれた。




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開襟シャツにチェックのロングコートという秋の装いが似合っている。


朝のヒカみたいに、俺も『そのコート可愛い』とか言えたらいいんだろうか。

ああー、やっぱり無理だな。想像出来ないし。
俺と伊野尾ちゃんじゃ無理。


机の上の自分の荷物を持ってさっさとケータリングルームに行こうと決めたところで、ケホケホ、と伊野尾ちゃんが軽い咳をした。




「風邪？大丈夫？」

『…あ〜いや、こういう季節の変わり目ってちょっと咳出やすくて。でも全然熱とかはないし、今日の仕事に支障は来さないから安心して』




俺の言いたいことはそういうことでは無かったんだけど、そういう意味でしか伝わらないこの距離が切ない。




「そっか。お大事にね、ドラマも忙しいと思うけど」

『ありがと。あとでマネージャーにのど飴でも買ってきてもらおうかな』




「それがいいね」と無難に返事をしようして、のど飴、という言葉に何故かピンとくる。

_____あれ、そういえば。




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