平行線 【ymin】

003 ym ページ3

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大ちゃんとのご飯の日から二日後、水曜日。
朝から晩までMV撮影でずっとメンバーと一緒にいる日。

俺が楽屋に入ると、『あっおはよ、涼介』とすぐに気付いて挨拶をしてくれたのは知念だった。

それから『おはよー』『おはー』と、スマホを触っている大ちゃんと、奥のソファで寝転がっているヒカからそれぞれ挨拶が聞こえる。




「おはよ。あれ、知念もう準備終わってんの？」

『だって僕もう次だもん。今、宏太が撮ってるから』

「あっそうなんだ。今日一番誰だったの」

『俺だよー。また九時スタート。朝超早えしこの後超長え』




そう不服を漏らしたのは、ヒカだった。確かに前回も前々回も彼が一番目だった気がする。




『いつしか俺が最初にソロシーン撮るって定着しちゃったんだよなー。まあ、別にいいんだけどさ』

『えーさっきまで光くん、なんで俺が一番最初なんだって文句ばっか言ってたじゃん』

『うるせー有岡！とりあえず俺は昼休憩まで寝るから！おやすみ！』




ヒカはかけてた毛布をガバッと顔まで被り、そんな彼を見て『おやすみー』と大ちゃんは笑う。

俺は大ちゃんの向かい側の席に座り、荷物を置いた。




『ってか山田来るの早くない？撮影すんの俺の次なんだからもう少し遅くてもいいでしょ』

「なんか午前中に何本か別の取材入ってんだって。隣の部屋で受けてくる」

『あーだから山田だけ衣装三着もあったのか！』

「そうそう。ってか他のメンバーは？まだ来てない？」

『うん。高木が午前中は雑誌の撮影、裕翔といのちゃんはドラマの撮影してから合流だって。今日、全員揃うのは夕方になりそうだね』




大ちゃんはそう言いながら、近くにいた知念にバレないように『がんばれよ』と口パクしてきた。

何ががんばれだよと呆れつつも、衣装に着替えようと立ち上がる。



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『ってか山田、そのコート可愛い』と褒めてくれたのは寝ていたはずのヒカだった。




「なに急に」

『いや、可愛いなって思って。似合ってるし』

「えー。ありがと。これ今年買ってお気に入りでさ」

『一昨日飯食った時もそれ着てたよな』

「よく覚えてんね。そー、なんか一番取りやすいところに掛けてるから結局こればっか着ちゃう」

『それ分かる。俺もいつも同じジャンパーだわ』

「大ちゃんも変わんないよねー」




いつも黒ばっかりの俺にしては珍しいベージュの秋物コート。

褒められて嬉しくなった俺は、今日はヒカに優しくしよう、だなんて思った。



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