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「帝…後悔しますわ。駄目です」
帝はため息とともに言った。
「雅さん…君は本当に自分に自信がないのだね。そういえば君、笛を吹きながら舞っていなかったか?」
そう…それが、私の唯一の特技だから。
「あれは、普通の人にはとてもできないことだ。それに、君は美しい。身分や、歌の巧拙を気にしてはならないよ」
私が…美しい?良い鏡を持っていなかったから、自分の顔を見たこともなかった。たしかに、身分や歌の巧拙ばかりを気にしていた気がする。わたしには薫子や内親王にはない力がある。
「私は、同情ではなく、自分で選んで、あなたに恋をした。断ることもできたんだよ。それを、初めて自分で…選んだ。あなたといると、とても…楽しいんだ。わかってくれるかい?」
帝が私に、「あなた」と呼びかけてきた。
帝が…わたしを必要としている。このわたしが…生まれて初めて、本当に必要とされている。
「帝…」
「朧の君、と前みたいにそう呼んでくれないかな?茂仁、でも構わないよ?」
この顔は本気だ。見たらわかる。
「茂仁……私もあなたに、恋をしたいと、思います」
「本当かい?嬉しいよ。雅」
初めて、呼び捨てにされた気がする。
「あなたが、本当に私でよいのなら」
初めて心を開いた相手に一生尽くしたい。
私は心からそう思った。
「茂仁…好き、です」
筑波嶺の 峰より落つる 男女川
恋ぞ積もりて 淵となりぬる
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清原諾子 - はじめまして、清原諾子です。歴史の中でも平安時代が一番好きで、この作品がすぐに好きになりました。これからも頑張ってください。 (2018年7月9日 7時) (レス) id: c298dbb326 (このIDを非表示/違反報告)
藍城彩(プロフ) - はじめまして。藍城彩です。私は、平安の話は苦手なのですが、この話は引き込まれていきます。これからも、頑張ってください。 (2018年7月8日 17時) (レス) id: ecf7c6d4da (このIDを非表示/違反報告)
アサノ(プロフ) - はじめまして、アサノと申します。凄く魅力的な作品で思わず、引き込まれました。これからも頑張って下さい。 (2018年4月16日 0時) (レス) id: 2c5d1feb72 (このIDを非表示/違反報告)
作者より - いろいろありがとうございます。顔を見られたのは雅ちゃんの不注意、顔を見られても動揺しなかったのは、「帝の妃に」という教育方針のせいかな?なんて。すみません。頑張ります、 (2018年4月15日 21時) (レス) id: 8d3c83900b (このIDを非表示/違反報告)
ぺったんこ@受験終るまで更新できません(プロフ) - (追記)現在のように、男性が不法侵入してただ体を強張らせるだけではなく、もっとドン引きさせても良いのかなぁ、と。。長々とスミマセン・・・ (2018年4月15日 21時) (携帯から) (レス) id: 46235445be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ΨΨ | 作成日時:2017年10月4日 18時