こんなヒロインは嫌だ。【オリジナル】

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自意識過剰ではない。



鼻の下伸ばしたオヤジが私の胸をガン見しているのは絶っ対に自意識過剰ではない。



チカンとかしてこないだけありがたいと思おう。別に見るのは無料だ。金とってやろうかこのヘンタイジジイ。



久しぶりに乗った電車。朝の電車が混んでいることをすっかり忘れていた。


自分たちのスマートフォンを弄っている乗客たちがか弱い女の子に席を譲ってくれるはずもなく、しかたなくドアにもたれかかり、ぼうっとしているだけなのだ。


寒いからってニットのブラウスを着てきたのは失敗だった。余裕だと思ってたけど、やっぱり去年の服はサイズが合わない。お気に入りだったのに、もう着られないのか。



あー嫌だ嫌だ。けどこれをクラスメイトたちに言ったら自慢だと思われるんだろうな。こっちは本当に悩んでるのに。



少し騒がしい車内には思い思いのことをしている人たち。誰かのイヤホンから品のない洋楽が流れているから、私の愚痴も周りには気付かれない。


あと数駅で着くし、少しゆったりしてもいいかなぁ。



目の前のオヤジのこともすっかり忘れて、リラックスした雰囲気になっていたから。



ガタン、といきなり電車が傾いたとき。



｢わっ、ととっ……｣



バランスを崩して、前かがみになってしまった。体勢を戻したときには、鼻血出してぶっ倒れてる、さっきのオヤジ。




全て察した。






……胸など、いらぬ。






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