【REBORN】最弱幹部は息を潜める (ページ13)

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目的12:死神の足音ページ13

ポールが倒れ、リングが地面に転がったはいいものの

「………………遠い……なぁ……」

別に想定してなかったわけじゃない。
むしろここからどうしようとは思ってはいたけど
取れる選択肢は多くなかった。
少しずつ這ってリングへと近づく。

「……っう……こ、の……………」

少しの距離なのに、もうすぐそこにあるのに。
目と鼻の先が絶望的に遠い。

全身が痛い。寒い。熱い。

あれだけ殺しておいて

あれだけ踏み躙っておいて

悪夢とか悪魔とか言われていい気になって

自分の周りは生きていてほしいなど烏滸がましい。

幻聴が聞こえる気がする。全くその通りだ。
それでも、止まる理由にはならない。
だから、私に死んで欲しいなら、殺しに来い。

ーーーーーーーザッーーーー

幻聴に反論したとき、何か聞こえた。
ノイズかと思ったが違う。

ーーーーザッーーーーザッーーーーーー

足音だ。ゆっくり近づいてくる。
死神のものかな、なんて思ってしまった。

殺されるのかなぁ。
みんな助かるかなぁ、という気掛かりはあるけど。
これが、幕引きだというのなら……

目を閉じかけたとき、手首に痛みが走った。
全身の熱や痛みが消えていく。

「……え……？」

体を起こし顔を上げるとそこにいたのは死神ではなく
学ランを羽織った少年だった。

「咬み殺す前に死なれては困る」

……やっぱり死神かもしれない。
でもこの際どちらでも構わない。

「このバトルジャンキーが……
でもありがとうございます」

彼はあの毒を受けた状態で立ち上がれたということか。
本当底のしれない戦闘狂だ。
彼の要望どおり戦うのをやぶさかではない気がしてきたが、今はまだ早い。

「まぁ手合わせは後でにしましょう」
「君にそんな権限はないよ」

コノヤロウとも思ったがここは抑える。
事前に情報を仕入れる大切さを実感した。

「……貴方はこの街やこの場所が好きなんでしょう。
そこで死人が出るのを、貴方はよしとはしないはずだ」

六道骸が脱獄して日本に潜伏してた際、
隣町まで殴り込みに行ったという事実は知っている。
この戦闘狂はナワバリを他人に荒らされるのが気に食わないのは情報から見て取れた。

「……君、やっぱり気に食わないな」
「そっくりそのまま返すけども」

お互い背を向けて他の守護者達の救出へ向かう。

「次会ったときは咬み殺す」

そんな声が背中から聞こえた。
その次が来て欲しいような、やっぱり嫌なような気持ちを抱えて
まずは嵐の2人の元へ急いだ。