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ミッドナイトブルー【高杉】 ページ35

その人は遠い目をする人だった。

何も聞こえない、何も見えない深海に潜む魚みたいな目で空虚を感じさせるのが得意な人で、それでいて力強さがあった。

脆く、儚く、そんな物とは縁遠く、そしてまた近くにあるような、それが彼の魅力なのかも知れない。いずれにせよ人という生き物はそういう謎めくものに惹かれるものだ。


「総督にとって私は何ですか?」


上にも下にも広がるミッドナイトブルーの空間に散らばる煌めきを見下ろして私は呟いた。怖くて彼の顔なんて見れやしない。口に出すのもやっとの問いだ。

静かな空間に彼の吐き出した煙管の煙だけが薄く広がって、この香りでいっぱいにして欲しいなんて願った。そんなの、無理だと分かっているのに…願うだけならタダだから。


「さァな」


やがて、静かな呟きが空間を支配した。
彼の吐き出す煙と違わない今すぐにでも消えてしまいそうなほど静かな其れは空気に溶けて広がって、少しずつ少しずつ私の心の隙間に入り込んでいくみたいだ。侵食される、決して満たしてはくれないのに。


「少なくとも、俺ァお前ェさんが思う程どうでも良いと、そう思ってる訳じゃあるめェよ」


伸びた右手が私の頭上に乗る。不器用ながらに沈められた手が私の髪の毛を撫で回す。薄く開いた唇が「すまねェな」と動いた。


「いいんです、分かってましたから」


私は貴方の気持ちを分かっている。
だけど、貴方は私の気持ちなんて分からないのでしょう。

解けない問題【銀八】→←黒と白【桂】



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設定タグ:銀魂   
作品ジャンル:恋愛
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 詩織さん» コメントありがとうございます!内容によってはお待ちして頂く事になりますが受け付けておりますよ(^-^)/ (2017年7月12日 21時) (レス) id: b30e496864 (このIDを非表示/違反報告)
詩織 - リクエストって、今も受け付けてますか? (2017年7月12日 17時) (レス) id: e1eb8c8d20 (このIDを非表示/違反報告)
lying doll(プロフ) - みかづきさん» ありがとうございます(´∀`*)了解致しました〜 (2016年8月29日 11時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
みかづき - リクエストよろしいでしょうか?「嘘嫁」の番外編が見たいです。 (2016年8月29日 9時) (レス) id: 9bc726f217 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作成日時:2016年8月28日 19時

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