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結果は惨敗だった。
掠りもしないスロットを2時間以上見つめ続けて負けに負けた結果を受け入れるのも嫌な話で。
こんなに気分が良いのに負けてしまうなんて相当今日はツイて無かったのかも知れない。昨日もツイて無かったのかも知れない。
すっかり日の沈んだかぶき町、夜の店が開店し出してどんどん空虚さが心の中に広がっていく。
「ばーか……」
会いたい。
今すぐ会いたい。
夜空に輝き始めた一番星を見上げて呟いた。口に出して言えなかった「早く帰って来い」を何度も何度も心の中で唱えた。
「銀さん?」
「え…」
掛けられた声に振り返れば、そこには両手に大量の紙袋を提げたAが居た。呑気な声音で「こんな所で何してるの?」とニコニコしながら近づいて来るA。
「あのね、お土産沢山買っちゃって…あと舞妓さん見たんだけど本当に綺麗で、あとご飯が美味しかったのと、それと…」
話したくてうずうずしているのが見て取れる。嬉しそうに話すAはたった2日会わなかっただけだというのに懐かしくて。
「途中雨のせいでビショビショになっちゃったから早くお洗濯しないと…あと、紅葉はまだまだ先だと思うけど少しだけ色付いてる所もあったんだ。すごいよね」
「なァ」
「ん?」
キョトンと小首を傾げるA。
後頭部を無造作に掴んで肩口に押し付けた。不思議そうに「銀さん?」と俺を見上げるソイツに俺は「何か言うことねーのかよ」と言った。
「えっと…ただいま?」
「……おぅ、おかえり」
「あと、旅行中ちょっとだけ寂しかったよ」
「あーそう」
「だから、今は嬉しい。やっと会えたね」
邪気のない真っ直ぐな言葉と笑顔に思わず俺まで笑ってしまった。
本当のことは言えないけれど、もう一度抱き締めて俺達は顔を見合わせて笑うのだった。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 詩織さん» コメントありがとうございます!内容によってはお待ちして頂く事になりますが受け付けておりますよ(^-^)/ (2017年7月12日 21時) (レス) id: b30e496864 (このIDを非表示/違反報告)
詩織 - リクエストって、今も受け付けてますか? (2017年7月12日 17時) (レス) id: e1eb8c8d20 (このIDを非表示/違反報告)
lying doll(プロフ) - みかづきさん» ありがとうございます(´∀`*)了解致しました〜 (2016年8月29日 11時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
みかづき - リクエストよろしいでしょうか?「嘘嫁」の番外編が見たいです。 (2016年8月29日 9時) (レス) id: 9bc726f217 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作成日時:2016年8月28日 19時