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ノータイトル ページ1

あなたに









「だから彼は姫と駆け落ちして、姫のために命を投げ打ったんですね。ロマンチックですね」

古典の教師がふふふ、と微笑む。周りには寝ている者、内職する者、真面目に授業を聞く者がいて、俺は最後だった。少し真面目とは程遠いかもしれない。授業内容はよくある恋愛の話で、俺は全くと言って良いほど興味がなかったからだ。古典は恋愛の話が多いのは仕方ないが、本当によく眠気を誘ってくれた。あいつが隣で俺を揺すり起こしてくれていた時のことを思い出すくらいには。
聞けば男は女のために命を投げ打っても良いほど愛を注いでいたらしいが、俺には共感が出来なかった。そんな大恋愛は生まれてこの方したことないせいもあるが、俺はまず恋をした事がなかった。
「みなさんにはこんな風に大事に思える人がいますか」
古典の教師は返答を期待しない質問をした後、また授業に戻った。きっとこの教室の中でその質問を真面目に考えているのは俺くらいだろう。大事な物ならバレーだとか、日々の食事だとか、そんなような物が思い浮かんだが、人となるとそう易々とはいかない。家族、友人…違う、それは英語でいう家具と同じ括りだ。可算名詞と不可算名詞の件であいつが言っていたんだ。俺が今答えるべきは固有名詞だった。あ、
「大葉…」
ふと口から漏れた声に少し動揺する。周囲を見ると幸いにも寝てる奴と内職している奴しかいなかったから、俺の言葉はきっとこの気怠げな空間に吸い込まれて行ったことだろう。まあそんなことはどうでもよく、俺にはなんであいつの名前が一番に出て来たのか不思議だった。とは言っても、俺はあいつと一番仲が良いのだから当然なのかもしれない。友人という枠組みの中で、俺はあいつの一番だと思う。きっと良い席に座っている。だから、俺もあいつを自分の心の中の大事なところに座らせているのだ。大事、大事、大事…。

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あゆむ(プロフ) - ちこうさん» 読んでいただき、こちらこそありがとうございました!返信が遅くなってしまってすみません!;; (2020年8月8日 1時) (レス) id: 67cd23fa6a (このIDを非表示/違反報告)
ちこう - ありがとう御座います!!!!!!!!!!!!! (2018年8月1日 13時) (レス) id: de82aeba6d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あゆむ | 作成日時:2018年5月3日 0時

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