外恋慕【 sh × sm 】 (ページ30)

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その夜、ほんとにたまたま家の前で紫耀と鉢合わせ。
私がちょうど慎太郎の家に行くところで玄関から出たと同時に紫耀が帰ってきた。

「あ、」
「……あのさ、」
「ん？」
「もしかしてだけど、今日事務所来た？」
「……え？」
「いや、違ったらいいんだけど」

明らかに動揺した。もしかして、あの男の子が伝えてくれたの？
だけど、名前も伝えてないのにどうして私だと分かったの？

「……たまたま近く通りかかって、」
「へぇ、」
「……うん、」
「Aってさ、嘘つくと目合わなくなるの気づいてた？」
「え、」
「ほんと変わんねえな笑」

屈託のないその笑顔が大好きだった。
空白の時間を埋めるように、紫耀は昔のように接してくる。
振り出しに戻そうとしてくる。

紫耀が心配で、ダンスをやめてほしくなくて、
説得するついでに、またあのダンスが見たかった、
……なんて、そんなの言えるわけない。

「慎太郎んとこ行くの？」
「うん」
「……この前はごめん」
「え？」
「俺どうかしてたわ」
「……ほんとだよ！ビックリするじゃん！」
「ははっ……ごめんごめん、忘れて！」
「うん、……じゃあ行くね」
「ん、じゃあね」

ガチャンと自分の家に入って行った紫耀の背中は何故だか寂しく見えた。きっと気のせいなんだろう。だけど、抱き締められたあの瞬間は鮮明に蘇る。忘れることなんて出来るわけがなかった。次第に脳内を支配するモヤモヤがいつまで経っても消えなかった。

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